出版社内容情報
ライン河畔の貧しい音楽一家に生れた主人公ジャン・クリストフは,人間として,芸術家として,不屈の気魄をもって,生涯,真実を追求しつづける.この,傷つきつつも闘うことを決してやめない人間像は,時代と国境をこえて,人びとに勇気と指針を与えてきた.偉大なヒューマニスト作家ロマン・ローランの不朽の名作.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
78
主人公の幼少期から青年期まで。物語は、一人の人間が生まれ世界と出会い、生活の困難と、富者と貧者、命令する者とされる者があるという世界の不正と出会う姿や、青春の希望と欲望に浮かされるように経験する友情や恋などの感情を追って進みます。音楽の天分を持ち、偉大な楽匠たちのように「愛を放射する」作品を書くことを願うクリストフ。今はまだ自分の高い矜持や孤独、欲動に振り回され、傲慢で粗暴で、しかしその生気と強い感受性で世界を自己を掴もうとする姿を通し私を惹きつけずにはいない彼。彼はどんな自己を見出すのでしょう。次巻へ。2022/02/22
ベイス
59
冒頭からグイグイ、とはいかない。いかないが、ところどころ、美しい瞬間がある。生まれたてのクリストフがみたこの世の描写などは驚異的。赤ん坊が言葉を操るような不思議さ。クリストフとともにある時間、じれったくもあり、甘ったるくもあり、ついていけない部分もあり、それでもいつの間にか、すっかり味方になって伴走している自分に気づく。過剰な文章、冗長な展開、その中に金言が突如現れる。読み進むのに忍耐は必要だけど、これこそが名作の条件とも言える。登場人物がやたら多いが、中でも叔父のゴットフリートは、格別な存在。2022/03/16
のっち♬
53
「いずれの国の人たるを問わず、苦しみ、闘い、ついには勝つべき、あらゆる自由なる魂に、捧ぐ」虚偽と惰眠に対して苦闘し、真実に対して勇敢に突進する自由な魂。その生涯は、方正、勇気、堅忍のある幼少時にはじまり、自然の害力や、濁れる欲望や、暗い思考などと不断の闘争を繰り広げる。独創を発揮しつつも、彼の心に染み入る倦怠、陶酔、快い苦悶。その人生は序盤から波乱に見ており、恋愛と孤独、称賛と誹謗、堅忍と放恣、まさに「急激な反動の連続—極端から極端への飛躍の連続」だ。著者の描く生命の響きとその芸術の香りに身を委ねよう。2020/03/01
absinthe
47
大学時代に夢中になって読みふけった本。主人公はヴェートーベンを彷彿とさせるがそうではなかったらしい。凄まじいまでに心に迫る話だった。
カブトムシ
40
ロマン・ロランは、フランスの小説家、劇作家。フランス中部のブルゴーニュ生まれ。歴史学を学びローマ留学後、パリ大学で音楽史の教授となった。数多く戯曲を執筆したが、10年余りをかけたこの小説によって、その真価を認められ、1915年ノーベル文学賞を受けた。ドイツ人の音楽家クリストフの誕生から筆を起こし、(1)クリストフの少年時代と青年時代、(2)壮年期のクリストフのパリにおける生活とその環境、(3)主人公の生涯の完成期となっている。20世紀の「大河小説」の先駆的作品である。私は、高校時代にダイジェストを読んだ。