出版社内容情報
文豪ゴーリキイ(一八六八―一九三六)がかつて親しく交わった友人達――トルストイ夫妻,チェーホフ,レーニン,コロレンコらの思い出を繊細な筆致で生き生きと描写した回想録.「人間」の芸術家といわれるゴーリキイの暖かい愛情がどの一篇にも溢れ出ている.すぐれた文学作品のみならず同時代の思想史でもある.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kozy758
6
著者の幅広い知己が余すところなく書かれている。貴重な史料である。トルストイの言葉「まず何よりも自分を大切にしなさい-自分自身のために。そうすれば、人々にも多くの物が残る。」が一番心に残った。トルストイ夫人についても書かれていて、得るところ大であった。チェーホフも葬儀まで書かれていた。彼の言動も興味深い。2015/09/22
モリータ
4
「神聖喜劇」から。引用のあったアンドレーエフへの述懐ももちろんよかったが、チェーホフの「われわれは良い天気や豊作や愉快な小説をのぞんだり、うんと金持になりたいとか警察長官の地位を授りたいとか、いろんな希望で生きることには慣れている。ところが賢くなりたいという希望となると、ひとがそれをもっているのに気づいたことがない。われわれは考える、新しいツァールの時世にはもっとよくなるだろう。また二百年たったら更によくなるだろうと。だが誰一人、明日はもっとよい日が来るようにと心掛ける者はない。(p.117-118)」と2012/04/03
金北山の麓に生まれ育って
1
【40年の時を経て】小林秀雄VS正宗白鳥のトルストイ家出論争を熱くなって何度も読んで以来、その発端となった本書をいつか読まなきゃと思いながら未読だったので手に取った。なるほど白鳥好みの(陳腐な言い方ですが)巨人で複眼的で何より民衆への複雑な視線が生き生きと描かれていて読み応えあった。トルストイの小説は回心後しか読む気になれないがトルストイという人物には興味が湧いてくる。途中からちょっとデフォルメしてあってもっと普通のトルストイが捨象されていないかと疑念を持ってしまったまぁそんなの誰も読みたくないだろうが。2023/06/29