出版社内容情報
ペドロ・パラモという名の,顔も知らぬ父親を探して「おれ」はコマラに辿りつく.しかしそこは,ひそかなささめきに包まれた死者ばかりの町だった…….生者と死者が混交し,現在と過去が交錯する前衛的な手法によって紛れもないメキシコの現実を描き出し,ラテンアメリカ文学ブームの先駆けとなった古典的名作. (解説 杉山 晃)
内容説明
ペドロ・パラモという名の、顔も知らぬ父親を探して「おれ」はコマラに辿りつく。しかしそこは、ひそかなささめきに包まれた死者ばかりの町だった…。生者と死者が混交し、現在と過去が交錯する前衛的な手法によって、紛れもないメキシコの現実を描出し、ラテンアメリカ文学ブームの先駆けとなった古典的名作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobi
99
死後の世界とか回想主体の物語にはモノローグが似合っている、例えば「黄色い雨(F.リャマサーレス)」のように、と思っていたけれど、この作品は思いっ切りダイアローグ主体。メキシコという土地柄もあってか、愁いや嘆きにも賑やかさを感じてしまう。そして簡潔な文体。単語数も英語なら中学英語のレベルで、たまに現れる陽炎とか恩寵という単語が新鮮。一読目、時の関係にも人の関係にも混乱しつつスサナへの呼びかけに痛切な哀しみを感じた。再読して、緊密な文体、断章毎の最後の一行の余韻に浸る。時にクリスタルのように透徹した情景描写。2018/08/10
buchipanda3
95
「俺はささめきにやられたんだ。そこでは命はささめきのように風になびいている」。簡潔かつ真っ正直に素の姿を描き出す著者の筆致が良いなと。加えて時系列を揃えずに交錯する幾つもの断片的な語りの浮遊感に酔い痴れた。その構成に初めは戸惑ったが、むしろその曖昧さこそが生と死の狭間を彷徨う人生の不確かさや不条理、虚無をこの上なくリアルに描写していると思えた。そんな中、無法と暴虐の男が見せる一途の念に人間なる者の妙味を捉える。読了後、改めて読み返した際、男の幼き原点となる太陽と風と露の光景にはただ哀切のみが広がっていた。2024/03/14
マエダ
91
ガルシアマルケスの「百年の孤独」とルルフォの「ペドロ・パラモ」がラテンアメリカ文学の最良の作品とされている。現段階の自分には正直面白く読めていない。ここが今の境界線。また再読して挑戦したいと思う。2017/09/20
どんぐり
90
母親が亡くなり、父親のペドロ・パラモを探しにコマラの町にやってきたフアン・プレシアド。「ここにはもう何年も人が来ていない」というロバ追いに導かれるように入っていくと、そこは過去という時の流れに包まれた町。昼間は死んだような静寂が、夜になると罪に穢れた亡霊たちが歩きまわり、苦しみから救われない亡き人たちとの会話の断章がいくつもいくつも続く。それをつなぎ合わせながら読む。だれがどうなって、それがどうしたんだか一読しただけではわからず、解説を読んで〈ああそうなのか〉と、不明の部分を確認する。それでも、十分理解し2019/12/20
コットン
86
淳水堂さんの『幻想文学ベスト3(海外編)』のおすすめ本。 1960年代のラテン・アメリカ文学ブームの先陣を切った作品の一つ。生者と死者の生活する場が同じという感覚が1955年当時としては凄く新しいものだったと想像できる。2021/07/23