出版社内容情報
ギリシアの唯物論哲学者エピクロスの現存するほとんど全著作を収録した.人間にとって最高善としての快楽は精神的な楽であって肉体のそれではない.真の幸福は外物にとらわれず,また煩わされず,死の恐怖から免れた無動,平静の精神状態であるとするエピクロスの哲学は,本巻中の諸編から直接に汲みとることができるであろう.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
WATA
60
現在残っているエピクロスの文章を1冊にまとめて翻訳したもの。「人は恐怖のために、あるいは際限のないむなしい欲望のために不幸になる」「十分にあってもわずかしかないと思う人にとっては、なにものも十分ではない」など倫理面で鋭い指摘が多い。要約すると、足ることを知っていれば裕福でも貧乏でも幸福であるということらしい。ある意味、東洋の思想に通ずる部分がある。エピクロスが書いたたくさんの文章が、長い歴史の中で失われてしまったのは残念。もっとこの哲学者の著作を読んでみたかった。2014/09/08
かわうそ
41
『正しい人は、最も平静な心境にある、これに反し、不正な人は極度の動揺に満ちている。』79 狂人を抜きにして不正な人というのはこのような状態であるから幸福とは言えないのです。狂人のみが不正な状態でも平静でいられるのです。 『快の限度を思考によって測れば、限りない時間にも、限られている時間においてと同等の大きさの快しか得られない。』79 むしろ、不快は計り知れないものであって不死になれば不快のみ増え続けるのです。これが人の寿命がある所以とも言えるのです。寿命は神の思いやりみたいなもんです。2022/10/16
おせきはん
26
心の平静、精神的な快さを求める哲学、死は何ものでもないとする考えに共感しました。快楽主義という言葉から連想される思想とは距離があると思いました。天界・気象界に関する記述は現代の認識とかなり違いますが、当時の考えがわかって興味深かったです。2021/09/17
壱萬弐仟縁
24
ヘロドトスへは物理学的な説明として原子、熱、運動が出てくる。霊魂は微細な部分から成り、全組織体にあまねく分散している(28頁)。霊魂は哲学だと思うが、物理学の物質との関係で出てくるのが古典的だと思われる。 ビュトクレス宛の手紙では、乱されることなく平静に生きることが肝要である(45頁)。多くの自然現象が個別に解説され、虹は、光の照射を受け彩色されるとある。虹が円い形をして現われるのは、すべての点が目まで等距離と視覚に観察されるため(59頁)。 2014/08/02
takehiro
15
「肉体において苦しみなく心境において平静なこと」を真の快楽とするエピクロスの考えに同意しかない。ワタシのように心穏やかに生きていきたいと思っている人にとっては頷ける点が多いと思いました。自然とか宇宙の話はよくわかりませんでした汗2023/06/07