出版社内容情報
近代哲学の祖デカルトが,狭義の哲学のみならず自然学をも含めた自己の広義の哲学大系を最も系統的に叙述した著作.本文庫版は原著の全四部のうち,第一部の形而上学と,物体の運動法則を説明した第二部の物理学的自然学の部分を収めた.綜合的「学」としてのデカルト哲学の根本思想がここに開示されている.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
49
先に読んだ“ちくま学芸文庫”版では、『哲学原理』第一部“人間認識の諸原理について”のみの訳出であったことから、第二部“物質的事物の諸原理について”をも訳出さていた“岩波文庫”版を読んでみた。第一部は、『方法序説』、『省察』と同じく“我思惟する故に我あり”についての論考。第二部は、数学や物理学の起源、科学の原点、近代科学の根幹の書であり、デカルトの自然科学に対する思惟の深さ、含蓄の深さに驚愕・感銘した。第三部以降の訳出が望まれるところ。2019/11/24
ちぃ
41
ここのとこ、哲学書とくれば圧倒的な読みやすさを誇る光文社新訳だったので岩波のひたすら堅い文体に四苦八苦。ですが「難点に拘泥することなく小説を読むようにざっと全体に目を通してほしい」という冒頭の書簡の言葉に甘えて、ざっと把握\(^o^)/すべてを疑えと言ったはずのデカルトがどうして神だけは信じることができたのか。自らの目を開いて歩いていたはずのデカルトでもそこは超えられなかったのか?そうまで内在化していたのか。異教徒の存在は前々からわかっていたはず。なのになぜこうも躍起になっているのか。わからない2017/02/19
かわうそ
40
『従って原理は事物なくしても認識できるが、しかし逆に原理なくして事物は認識され得ないということ、そしてその後に、これらの原理に依存する諸事物の認識を、原理から演繹し、その実際行われる演繹の全過程のうちに、完全に明白でないようなものは、何も残さぬようにしなければならぬ』14 演繹法というのは合理主義の究極系でしょう。 デカルトは諸事物の全過程も明白になる原理を見つけるために全てを疑ったのです。スピノザが「デカルトは疑うために疑ったのではなく、確固たる真理を見つけるために疑った」といったのはそういう意味です。2023/09/07
紫陽花と雨
26
ラテン語から仏語訳者への手紙という名の序章、エリザベート公女様への「あなたは私の研究を全て理解した唯一人の方です」という超丁寧なお手紙、からの本編第1部「人間認識の諸原理について」第2部「物質的事物の諸原理について」の訳を収録。第1部は有名な「我思惟す故に我あり」が登場。哲学的な話は先日読んだ般若心経訳に通じるものがある印象も。第2部は図形も登場した物理的な話で教科書みたい。難しかったけどなんとか読みきりました(笑)収録されていない第3部「可視的世界について」や第4部「地球について」も気になるところ。2021/05/01
絹恵
15
認識した知識を信じることは難しく、だからこそ真実なのだと思いました。しかし自らの感覚を信じ込むことは危険であり、それが誤りであることに気付かずに、過ごし過ぎ去って行きます。いつだって決断は苦しく迷い、選ばなかったほうの時間を考えてしまうこともあります。そしてその自然に見えるカリスマ性もまた、迷い込んだ時間により構築した自己なのだと思いました。2013/08/26