出版社内容情報
「咎め立てる炯眼よりも赦す炯眼の方が上手なのだ」(「悪口」).「これは怒り狂った判断を克服した徳である」(「叡知」)-264の断想,初の全訳と未刊主題を収録.貴重な日本版.
内容説明
遺作カード箱から二六四枚に書かれた断想の初の全訳と、未刊主題を収録。貴重な日本版。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナマアタタカイカタタタキキ
57
『幸福論』で有名なアランによる264の言葉の定義集。彼が獲得したという、“静謐な徳、イデオロギーとは無関係の、論争では得られない徳、すなわち真の省察の原型であり源泉である徳”の一端に触れられる。日々の隙間時間に少しずつ時間を掛けて読んだ。私ごときの教養で読み解くには晦渋な箇所が多く、殆ど理解できなかった項目も度々あったが、同時に詩的であり、印象深い言葉が沢山見つかった。こういった小さな着想の積み重ねが、大掛かりな思索の糸口となる。これほどの偉大な人物でも、やはりそこは変わらないのだということを実感できる。2022/01/30
lily
18
仮に命題は真としても逆は偽かな。結論を読んでいる途中で仮定を忘れるくらいなので。集合の境界線がはっきりしなくてボケている。それでも心にメモしておきたいのは、欲しがること、意識、激高、遊び、純朴、無頓着、哲学、論争、眠り、寛容、価値。2019/06/12
瓜坊
18
強いなあ。強い。強靭な精神、勇気と、あとは当然深い洞察がないと単語を一つ定義するのも出来ませんぜ、と。一気に読もうとするなら意外と時間がかかる本。なぜなら自分には何一つ「定義」することも能わないから。繰り返し繰り返し。一つの言葉に相対するのって中々無理ですよねえ。それでいてどこか戯れ感のあるユーモアも感じるから堪らない。抽象から具体、例示、そしてまた抽象へ。付録の未定義集の言葉の定義も読ませてほしいので、誰かナントカ定義できる愛のある強人はおらんか、と思う。終盤のPRSTがクライマックスに感じる面白み。2017/02/28
うえ
7
欲望「欲望はしばしば、欲求に変わる、とりわけ、欲望していたものを獲得した人が、それを再び失うようになる時」苦悩「息も止まるほどの極度の注意から出てくるもの。結果を意識すると、さらにひどくなる」神学「これは理性が神話を受け入れられるようにするための神話への批判である。たとえば、ストア主義者たちは、オリュンポスの神々は世界という、広大無辺の、ある神の諸力の一部をさしたそれぞれの名にすぎないと説いている…両者とも、本質にふれない再編集、論拠、反論」思いつき「これは失敗しても諦めのつくたぐいの意思の試みである」2016/07/12
左手爆弾
6
一気に読んだ。そうするとアランの態度がわかる。いかに情念や自由意志を大事にしていたか。いかに機械的な自然主義や功利主義と戦おうとしたか。だが、これは手元に置いておいて、時々引いてみるような本でもある。何かを考えてみるとき、その考えをほんの少しだけ広げる。言ってしまえば大した定義ではない。それでも、その定義を知ることにより、ほんの少しだけ世界が広がる。そうした、わずかばかりの光を見せてくれる本である。2014/08/05