出版社内容情報
自由民権運動の理論的指導者であった中江兆民,自由民権がはたさなかったブルジョア民主主義体制の徹底化をはかって,大正時代への橋渡しの役割をになった社会主義者幸徳秋水,大正デモクラシーの烽火をあげた民主主義の使徒吉野作造.三人の固有の性格と各人の思想的役割を,その背景になった時代の流れとの関連で追究する.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
95
近代日本政治思想史におけるかなりの役割を果たした三人の人物ー中江兆民、幸徳秋水、吉野作造ーをとりあげつつその果たした役割とその関連の思想までを論じています。最近はこのような人物は埋もれてしまっていますが、これらの人物の果たした役割を再認識することも重要だと思います。2016/01/03
denz
2
代表的な三人の思想家を通して、近代日本の民主主義とは何だったろうか、を論じた作品。兆民は、議会勢力が藩閥政府を倒して、彼のいうリパブリック=君民共治を成し遂げようとして挫折し、議会外での活動を通して政党の再生また藩閥打倒を図ろうとした。秋水は、政党に期待せず、無政府主義者・共産主義者として在野にあることで来るべき革命を待とうとしたが、巻き込まれて刑死した。吉野は、民衆の中から出た「天才」を議会に送り出し、民衆は彼を支援し監視するという議会と民衆の接点を探ろうとしたが、すでに時代は移り変わってしまっていた。2011/12/19