出版社内容情報
明治六年いらいの徴兵制は,太平洋戦争における敗戦によって廃止されたが,今日,再び徴兵制をめぐる論議がさかんになろうとしている.「天皇の軍隊」の名のもとに国民の名誉ある義務とされた兵役とは,民衆にとって何であったのか.近代日本が範とした欧米における徴兵制の起源を探るとともに,わが国徴兵制の本質とその歴史を描く.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
68
『戒厳令』に次いで1981年に出されたもの。前著と同じくヨーロッパにおける制度の成立から説き起こす。中盤で日本軍が国防から外征軍へと変わっていったことが記される。40年前の本で、また著者の立場が明快なため、現在の感覚だとちょっと違和感を覚える部分もあるが、日中戦争以降日本は戦争目的がなく、その結果戦略もなかったとする指摘は首肯できる。また、将校と兵卒の待遇や戦病死率の違い、日露戦争と太平洋戦争時の軍紀違反の内訳なども史料をあげて示されており、戦争の実態を立体的に理解するために現在も十分価値のある著作だ。2021/12/29
CTC
13
81年岩波新書。ダイエー中内功氏が猛反論した事で有名な関西財界セミナーでの住金日向氏による“徴兵研究必要論”は80年の2月。当時はソのアフガン侵攻で米からの圧力があったようだ。同年の終戦記念日に鈴木善幸内閣は「徴兵は違憲」と示した。根拠は憲法13条(個人の尊重と公共の福祉)と18条(身体的自由権)。そのような時代感の中で、著者は徴兵制の特色を明らかにするために本書を著したのだが…もちろん著者の傾向から少々鼻につく記述はあるのだが、成立までの歴史や本邦での実態や問題点まで現代に通用する名著と思う。2023/07/09
壱萬弐仟縁
13
石破発言は衝撃であった。死刑宣告まで出ているので。制度としての徴兵なのだ。制度については、法律や政策とも絡んでくる。どんな戦争でも、国家間の戦いであり、勝敗を決めるのが目的なのか。大多数の国民が犠牲となった結果、国家に優劣、支配/従属関係が成立する。僕が小学生だったか、地球儀でこの国は、あの国は、と説明を求めると、当時の母は大東亜共栄圏というか、戦争のことを語ったときがあった。幼心に、ヤバい世界なのだ、と直感した。私が消防団が嫌いなのは、軍隊原理で、頭たかとか、いう上官の命令は絶対だ、という方式である。2013/08/09
オランジーナ@
3
いかにも昔の岩波新書で、難しくて途中で投げ出してしまった。2019/08/15
Keiichiro
3
かなり古い本だが現在でも通用する考え方が使われている。 世界では徴兵制など軍拡が拡がっているが本書はそのことについて考える機会をくれる。2018/03/23