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岩波新書
陶淵明―虚構の詩人

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  • サイズ 新書判/ページ数 216p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784004305057
  • NDC分類 921.4
  • Cコード C0223

出版社内容情報

超俗の詩人と呼ばれる陶淵明は「桃花源記」のユートピアなど,中国では他に例をみない虚構の世界を描いている.1600年前に現代に通じる鋭さと深さで人生をうたった大詩人に,親しく作品を読み込みながら肉迫する.

内容説明

超俗の詩人と呼ばれる陶淵明は、「桃花源記」で身分の差のないユートピアを描き、「挽歌詩」においては自らの死を悼むなど、中国では他に例をみない虚構の世界を通して内面を探求し、苛酷な実社会と関わろうとした反俗の詩人でもあった。千六百年前、現代に通じる鋭さと深さで人生をうたった大詩人に「虚構」という切り口から肉薄する。

目次

はじめに 陶淵明と「虚構」
1 桃花源記―ユートピア物語
2 五柳先生伝―架空の自伝
3 形影神―分身の対話
4 山海経を読む・閑情の賦―怪奇とエロティシズム
5 挽歌詩・自祭文―「私」の葬式
おわりに なぜ「虚構」か

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

しずかな午後

5
陶淵明と言えば、隠逸、田園、晴耕雨読といったイメージがあったが、本書は「虚構」という少し変わった角度からアプローチする。架空の人物伝のかたちで自分自身を描いた「五柳先生伝」、桃源郷に迷い込んだ漁夫を描く「桃花源記」、地理書のなかの怪物に取材する「山海経を読む」など、陶淵明の幅広さを感じられてよかった。しかし一方で、もっと田園詩人的な側面の詩についても読みたいなと思った。既に陶淵明についてある程度知っていた方が、本書は新鮮に楽しめるのかもしれない。2023/04/27

もち

5
「虚構」をテーマに、陶淵明を代表的な作品を中心に説明する。わかりやすくありながら、少し掘り下げて説明されていて、知的好奇心を刺激されてよかった。さくさく読める。2017/10/20

茶幸才斎

5
陶淵明は、フィクションの面白みを作品に込めた当時の中国では珍しい詩人だった、との観点から、「桃花源記」「五柳先生伝」「形影神」、そして挽歌詩や自祭文その他の詩作について解説した本。私がまだ無害な高校生だった頃、授業で初めて「五柳先生伝」に接し、彼に深い親しみを覚えたものだ。本書を読んで、自らの生き方に対し描く理想と死に対する悲観との間で揺れ動く心情、また日常の現実と地続きに配した虚構により読者を幻惑したいという変な衝動に関し、共感するところが多かった。ただ、非常な酒への執着だけは、理解の及ばんところだが。2015/11/15

bittersweet symphony

4
一海知義(1929-2015)さん追悼の再読、手元にあるのは97年の初版本です。陶淵明(365-427)の代表的な詩作品を「フィクション」を切り口にして解説していく内容。それが近代以前の中国文学のなかで独特の地位を占めさせる要因になっている、ということになります。現代的な視点から見ると、メタフィクション的錯綜感が結果的に出ていることは評価すべきポイントと言えます。2015/12/08

韓信

3
桃花源記、五柳先生伝、形影神、挽歌詩など、「虚構」という特徴から陶淵明の作品を読み解く論考。現実社会への風刺、或いは死への恐怖と達観など揺れ動く自己を客観視するためのフィクションという作風を解りやすく説いている。ただ、劉宋成立時に流行した在野の人材のスカウトにおいて、陶淵明が熱心に勧誘された背景にまで踏み込んでいないように、歴史上の陶淵明像への彫り込みが浅い点は残念。また、挽歌など同ジャンルの先行作や典故も紹介し、陶淵明の詩が伝統に基づいていながら独自性もあることを証明している点も本書の特長。2015/02/24

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