出版社内容情報
世界中で水不足,水汚染,洪水が頻発している.また陸地の45%を占める国際河川地域で対立や紛争が絶えない.21世紀最大の問題ともいわれる世界各地の水問題の現状を報告し,その危機的状況を訴える.
内容説明
世界中で水不足、水汚染、洪水が頻発している。また陸地の四五%を占める国際河川流域で対立や紛争が絶えない。このように深刻化する水問題は、膨大な食糧輸入などを介して世界の水環境に大きな影響を与えているが、日本にもその責任の一端があるのではないか。世界各地の水問題の現状を報告し、その危機的状況を訴える。
目次
序 地球の水が危ない
1 地球環境と水の危機(水需要の増加と将来予測;深刻な水不足と水汚染 ほか)
2 紛争の絶えない国際河川・国際湖(地球の全陸地の半分近くは国際河川流域;中近東河川の紛争 ほか)
3 世界の水問題と日本人(日本は大量の水を輸入している;日本の第二次世界大戦後の水開発 ほか)
4 アジアの水問題と日本(地球の水危機への世界の対応;なぜモンスーン・アジアか ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kei
12
水質汚染、水不足、地下水、国際河川の上流下流の対立、国境河川の左右の関係、水力発電ダム等の問題。この時の本ですら、バーチャルウォーターの概念が出ており、日本が大量の水輸入国とされていたのに驚いた。そして、それに対して、一般的な基準ではなく、著者は対抗としては否定しているが、工業における間接水を出していたのは面白かった。日本は工業製品の輸出が輸入を上回っており、製造には多くの間接水が使われるので、その分水を輸出しているという概念であった。これに関して、あまり具体的な統計が無いということだが、是非見てみたい。2016/11/12
Masaki Iguchi
1
島国ゆえに国際河川がなく、水資源に恵まれた日本人は、生活水の確保に事欠く人たちが何億人といること、水を巡る国家間の争いがあることへの想像力を持ちづらい。日本は、水循環とともに生きてきたアジアの先進国として、自覚と責任を持って世界の水問題に取り組むべきである。(再読)2021/12/25
yu01
1
前半で水文学的な水問題を概観しているが、後半が興味深い。筆者の河川技術者としての経験と日本の水と開発の歴史を、自戒を込めて振り返っている。97年河川法改正という一つの到達点。そこには「戦後の大水害、高度成長期の水不足、ダム・ブーム、水害訴訟、住民運動、環境運動の高まりなど、多様な河川経験」が反映されている。(そして来年の水循環基本法!)。最後に「モンスーン・アジアにおける水田農業のもつ循環の思想の伝統と近代合理主義の滔々たる圧力との相克」を乗り越える思想の必要性。技術に始まり哲学にいたる…人生を垣間見た。2012/10/13
みつお
1
この本を読んでいかに日本が水資源に恵まれているのか再認識した。また、世界が直面している水の危機に関して、自分なりにできることをしなければいけないと強く感じた。2011/03/20
taming_sfc
1
高橋裕先生による2003年の著作。地球環境問題における水問題、国際的な水紛争、メコン川流域における管理、バーチャルウォーター、日本の水資源管理の歴史、アジア地域における今後の水資源管理のあり方、と網羅的に、しかしながら実証的に極めて説得的な文章で書かれている。大変分かりやすく、理論と実践、文型と理系、などを架橋した包括的著作である。2010/08/27