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岩波新書
チェーホフ

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  • サイズ 新書判/ページ数 213,/高さ 18cm
  • 商品コード 9784004309260
  • NDC分類 980.28
  • Cコード C0297

出版社内容情報

★本書は『書評空間 KINOKUNIYA BOOKLOG』にエントリーされています。

内容説明

日常に生きる人びとの悲喜劇をやさしく見守り、穏やかで端正な作品を残したチェーホフ。そんな慎ましやかで愛すべき作家の相貌の裏には、「無意味」の深淵をのぞいた「非情」な世界が秘められていた。この世界からの脱出はいかにして可能か。没後百年の今、現代の抱える課題を先取りした作家の深層を、作品と生涯から具体的に読み解く。

目次

第1章 作家チェーホフの誕生(チェーホフとその時代;ひそかな父親殺し;届かない手紙;カメレオンとペンネーム)
第2章 サハリンへの旅(感情からの逃避;石と化したこころ;「退屈」と意味;仮死と再生の旅―サハリン)
第3章 コミュニケーションへの渇き(ナンセンスな世界;主人公の消失―『イワーノフ』から『かもめ』へ;小説の文体、戯曲の構造;呼びかけと応答)

著者等紹介

浦雅春[ウラマサハル]
1948年大阪府生まれ。1971年神戸市外国語大学外国語学部卒業。1983年早稲田大学大学院文学研究科博士課程中退。東京大学大学院総合文化研究科教授。専攻はロシア文学、表象文化論
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

k5

61
今年は祖母のような近い人も、チバユウスケのようにただファンだっただけの人も含め、私の好きな人が亡くなった年でした。大学で教えを乞うた浦先生もその一人で、僭越にも偲ぶ会に先日出席させていただきました。先生の思い出を聞けば聞くほど、暖かくも皮肉なエスプリの人であったなあ、と思います。その知性がチェーホフという異才と真っ向から取り組んだのがこの本で、この新書自体が一冊の短篇集をなすように起伏に富んでいるかと思えば、映画的なイメージをもたらしてくれます。最終章の「呼びかけとは抱きしめること」が今の私に響きました。2023/12/09

ころこ

43
訳者による紹介本です。ドストエフスキー、トルストイなどの「大きな物語」が過ぎ去った後の「○○できない」作家という位置づけです。思想史的には当てはまらないこの比喩は、しかし「届かない手紙」のモチーフによる短編や、検閲の厳しいロシア文学の土壌がつくった本当は悲劇なのを喜劇に書き換えるアイロニーをみると、対比として当たっていると思います。結核による兄の死に自らの末路を予感してそこから逃走するニューアカ的な身振りは、実は作品と作家の同一視を許すモダン的な分かり易さを温存しているため入っていきやすいと思います。2021/09/23

nbhd

19
とても素敵な本だった。正直、これまでチェーホフは退屈に感じて、良く読めてこなかったのだけど、この本から「読み」の解像度を上げるレンズをもらえた気がする。・・・で、チェーホフの物語って「落語」みたいだな、っていうのがひとまずの結論。小物たちの物語だし、過剰にナンセンスだし、中心がないし、死をゾンザイに扱うし、教訓臭さもない・・・死後、遺体が腐らないように牡蠣輸送車両で運ばれたってエピソードが落語っぽい。こんな挿話とキーワードがふんだんに盛り込まれていて、良い作家研究ってこういうものだなと満足いっぱいになった2022/04/04

gogo

18
チェーホフの作品を深読みするための1冊。チェーホフの作品について、彼の生涯と作品の関係,作風の変遷を解説している。ある程度彼の小説や戯曲を読んだうえで本書を読むと、なるほどそういう解釈もできるのかと新たな発見があると思う。個人的には特に、壮年時のペンネームの使用と医師業へのこだわり、名文家と呼ばれる理由=簡潔を旨とする文体(「簡潔は才能の妹」)、登場人物間のコミュニケーション欠如の説明に、目から鱗が落ちる思いがした。2016/11/15

ロビン

17
チェーホフの人生と作品を、著者独特の読み解きを施しながら概説した一冊。作品のあらすじを書いてくれるので、未読の作品があってもついていける親切さがある。ロシア文学には特有の「暗さ」があると思うが、本書もチェーホフ作品の「孤独」や「空白」、「父殺し」などの「闇」の部分に着目している。『三人姉妹』や『桜の園』等にみられる「無化される科白」「空疎なおしゃべり」「一方的な会話」ー語る言葉に自分を賭けることができないことから来るコミュニケーションの不在、その虚無感、孤独感は恐ろしい。現実にもこういうタイプの人はいる。2019/05/10

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