出版社内容情報
文化と社会の形態によって異なる時間の感覚と観念を比較検討し,近代的自我に特有の時間意識がどのように形成されたかを,自然と人間,共同体と都市,市場と貨幣等々の関係のなかで解明する.現代社会学の名著.
内容説明
原始共同体、古代日本、ヘレニズムとヘブライズム、近代社会―文化と社会の形態によって異なる時間の感覚と観念を比較検討し、近代的自我に特有の時間意識がどのように形成されたかを、自然と人間、共同体と都市、市場と貨幣等々の関係のなかで解明する。近代世界の自己解放の運動の一環を担う比較社会学の深い洞察に満ちた労作。
目次
序章 時間意識と社会構造
第1章 原始共同体の時間意識
第2章 古代日本の時間意識
第3章 時間意識の四つの形態
第4章 近代社会の時間意識―(1)時間への疎外
第5章 近代社会の時間意識―(2)時間の物象化
結章 ニヒリズムからの解放
著者等紹介
真木悠介[マキユウスケ]
1937年東京都生まれ。東京大学名誉教授、共立女子大学教授。現代社会論、比較社会学専攻
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
81
大澤真幸や宮台真司の師匠の見田宗介の著作。近代人のニヒリズム、人は必ず死ぬ存在であり、淡々と最後に向かって進む直線という虚無的な時間観はいかにして形成されたかを考察。未開人の奇妙に見える神話や言語の時制や、万葉集にある現代人と異なる時間観などを取り上げ、ニヒリズムの克服に必要なものを論じていく。考察の題材の唖然とするほどの幅広さ、息を呑むレトリック。名著と聞いていたのだが、弟子たちの本と比べるのもおこがましい。これはモノが違う。飛ばして読むつもりだったが、購入することにする。まだ見田は存命なのに驚く。2018/04/27
おたま
39
「時間」は通例哲学や物理学の対象となってきたが、ここで真木悠介は「比較社会学」を方法として、私たちの時間感覚を解明していく。目的は何かというと、私たちが「時間」を、「帰無していく不可逆性」として、そして「人生はあまりに短く虚しい」と感覚してしまう、つまりは<時間のニヒリズム>を感じてしまうのは何故なのか、それを解明すること。さらに現代社会にあっては、私たちは時間に追い立てられ、加速される時間の中で追い詰められている、それは何故なのかも問われる。それらが、この近代社会の存立構造によることを明らかにする。2023/03/27
松本直哉
38
若い頃生命保険を勧められたとき、生涯を一本の数直線で示されたことに何ともいえない嫌な感じがしたのを思い出した。本書はアフリカの諸語、万葉集からプルーストまで幅広く渉猟しつつ、計量できない人間的な時間の概念がいかにして抽象化され人間を疎外するに至ったかを明らかにする。天智から持統の時代に水時計・暦(元号)・年代記が相次いで作られたのは偶然でなく、さらに私見をいえばこの時代に日本語の書き言葉が確立したことで、時間を線的に捉える思考様式が定着した。不可逆的に流れる線的な時間の流れと書き言葉は密接に関連するだろう2022/04/23
Eric
26
人類学的な視点から時間観を解説している序盤のパートや、時間感覚のマトリックス分類(p195)に関する解説が興味深く、硬派な文章だが最後まで読めた。中盤辺りは理解がやや追いつかなくなってしまい残念だが、それでも時間に対する考え方が広がる一冊。2021/03/25
たばかる
26
時間意識を歴史的に構造化する。驚くべきはその広範さで、歴史題材としてアフリカ原初社会・古代日本世界・ギリシャローマの古典古代・デカルト/ルソーの近代黎明期の文献などをふんだんに用いている。例えばレヴィ=ストロースが出たと思った次には万葉集の和歌が登場し、旧約聖書の抜粋があった次には精神分裂病の症例が紹介される。また最後には疎外や物象化といったマルクスのタームを使って、近代における「時間」の脱構築を図る。その論述のあまりもの鮮やかさにはもはや言葉が出ない...2021/03/01