出版社内容情報
【内容紹介】
鎌倉時代成立の『西行物語』は、歌人西行の生涯を記した伝記物語。友人の急死に世の無常を知った藤原義清は、娘を縁から蹴落して恩愛の道を絶ち、二十五歳で出家して西行と名のる。伊勢から関東へ、陸奥から四国と旅を重ねつつ、歌ごころの涌くままに詠ずる名歌は、彼のひたすらな道心をはぐくみ、ついに「願はくは花の下にて春死なむ」の願いどおり極楽往生を遂げる。数奇と道心の生涯を伝える物語のはじめての全訳である。(全一冊)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
真理そら
8
原文、現代語訳、語釈、鑑賞という親切な構成になっている上に、巻末には西行年譜、和歌初句索引がついていて楽しく読める。他の西行関連の作品を読むときにも便利に使えそう。西行の死後それほど時間の経たないうちにこういう物語ができているのが興味深い。西行出家の際、縁から蹴り落とされた娘の父を慕う気持ちが切ない。2018/01/22
tyfk
5
絵巻のストーリーがわかりにくいので、参考に読む(西行はどのような人物として語られたのか)。武蔵野がでてきて嬉しい。物語中の歌を岩波文庫にマーキング。2024/02/13
ちゅん
4
西行の人間臭さと藤原秀衡をうならせた詩の才能が印象的でした。2018/01/31
イコ
3
史実を再構築した物語。人間を作った話があるかなと思って買ったがその話はなかった。侠を感じたり詩的な表現があったりと不思議な力を感じる。西行について勉強したい人向けでしたね。2020/03/29
misui
2
西行の生涯を記した伝記物語で、あくまでも後世の作なので残された歌や伝承などから再構成した一生が辿られている。再構成したということは当然事実そのままを書いているわけではないようで、西行の性格も歌に見られるような数寄者ではなく、物語成立の鎌倉時代の思想を反映して求道者の面が強く出ているとのこと。『雨月物語』でも有名な崇徳院参拝の四国の旅などもあり、現実と虚構の間に見え隠れする西行像を追いながら歌を鑑賞するのはなかなか趣深かった。西行の歌はわかりやすくてよい。2018/08/25