内容説明
鎌倉時代前期、武家階級に活力ある政権を奪われた京都では、古来の政治・経済の基盤を失いかけた貴族たちは退廃的な生活にひたっていた。この風潮の中で、家柄と容色と才智にめぐまれた、久我雅忠の女がその異常な生涯を自らの手で記したのが『とはずがたり』である。14歳の春、無理に後深草院の後宮にされて一皇子を生みながら、複数の男性とも愛欲の生活を続ける大胆・奔放な生き方、体験を露骨に記述する文学史上特異な作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佳音
20
どうしようもない二面性をもった性的倒錯者に会いたくなったらこちらへどうぞ。過酷な状況で、自照性を持ち、人間とはどう生きるべきかを追求した一人の女性に会いたくなったら、こちらへどうぞ。 樋口一葉と二条こと雅忠女は現代でもっと評価されていい女性だ。2014/02/16
こぽぞう☆
18
かなり昔に読んだ本の再読。鎌倉時代の朝廷での美貌、家柄、才能を併せ持つ女官の日記。再読なので、原文は気になるところのみ眺めて、主に現代語訳を。瀬戸内晴美版では、作者の浮気を後深草院は知らなかったように書いてあるが、原文ではどうやら公然の秘密?作者、家柄も良いのに、妃ではなく女房として院に仕えたのが何かと面倒の元となっているような気がする。2016/03/02
CaLiLa
7
あぁぁぁ、すきゃんだるですぅぅぅ(笑)いやぁ後深草院、怖いっす!有明の月、怖いっす!!変な話、作者のちょっと奔放でワガママなトコって現代的な感じで嫌いじゃないが、ちょっと自信家すぎるトコは鼻持ちならないな。そんな彼女から厭世な記述が出ると、廃退した時代なんだなぁとつくづく思う。2014/06/23
fukurou3
6
劣等感を抱えマニアックな「後深草院」、アグレッシブな策士「亀山天皇」、勉強ばかりで恋に不慣れな「有明の月」の三兄弟、やり手のエリート「雪の曙」が、ツンデレ美少女「あかこ」を巡り、周囲を巻き込んで展開する王朝恋愛バトル。中身は今の(もしかすると当時も)価値観で見ると全くけしからん話。どこまで真実かは不明だが、鎌倉末期の貴族社会がいかに退嬰的であったかが非常にリアルに描かれている。作者の「二条」こと久我「あかこ」さんの行状はとんでもないのだが、「自分はぜんぜん悪くないもん」という態度は逆に清々しいくらい。2012/04/27
田中AD
5
愛欲に生きたと書いてあるから駄目なやつと思って、読んで解説を見ると政治的視点とかすごい。最もすごいのが蒙古襲来の時期、国家滅亡の危機なのにそれの話もなく、貴族のボケも凄まじい、幕末の日記を読むとこんなのがありそうだ。2016/05/20