内容説明
奈良東大寺の大仏に象徴される華厳の思想的理念は、日本文化のなかにも今もなお、広く深く生きつづけている。茶の湯において、小さな茶室でおこなわれる喫茶の行為のなかに無限の宇宙の広がりを見るのが茶道の生命であり、一輪の切り花のなかに永遠の相を見るのが華道の精神である。限りあるもの、小さなもののなかに、無限なるもの、大いなるものを見ようとする考え方こそ華厳思想の本質であり、その再発見を試みたのが本書である。
目次
序章 日本文化と『華厳経』(『華厳経』の世界;日本人の自然観のなかに定着した華厳思想;新しい世界観としての華厳思想)
第1章 『華厳経』とは何か―『華厳経』の構成と思想
第2章 華厳宗の成立(華厳宗の開祖・杜順;華厳教学の創始者・智儼;華厳宗の大成者・法蔵;華厳と禅との融合・澄観;『円覚経』の大研究者・宗密)
第3章 華厳思想の核心(小乗と大乗;大乗始教と大乗終教;大乗頓教―一念不生を仏となす;大乗円教―華厳思想の至境;四種の真理の領域―四種法界;華厳の観法)
第4章 華厳思想の流れ(新羅の華厳;日本の華厳)