内容説明
1920年代「長年に亘って彼自身の視野から離れることがなかった」日出づる国日本で、外交官として過ごしたポール・クローデル。彼は本務の傍ら、日本各地への旅行、美術や演劇に対する旺盛な好奇心、様々な人々との出会いなどを通して、日本の風土と文化への理論を深めた。「素朴な驚きに満ちた目を見知らぬ国に向ける一人の訪問者」として、我々から遠ざかりつつある大正時代の日本をフランスの詩人がやさしく語る珠玉のエッセイ。
目次
日本人の心を訪れる目
炎の街を横切って
一年の後
日本文学散歩
能
歌舞伎
舞楽
文楽
自然と道徳―竹内栖鳳画伯に
杭州
雪―杵屋佐吉の音楽に倣って
二本の青い竹
橋
杖
松の中での譲位
後の国
小さな使者達
明治
雉子橋の家
太陽の深淵
アントニン・レイモンドの東京の家
帝の葬儀
力士の構え
日本への惜別
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サイバーパンツ
11
『朝日の中の黒い鳥』。日の昇る国、日本で、黒い鳥(黒鳥)、クローデルは鋭い眼差しで、日本の文化を、精神を、行く末をじっと見守り続けた。そんな彼が、鋭い洞察力を備えた目で日本を捉えた本書は、彼の詩人としての美しい文章の効果もあいまって、分析の質、文章ともに、大変優れた日本文化論・日本人論の書となっている。2016/08/19
本の蟲
7
最近、外国人が書いた日本論を読み進めていて、本作はフランスの劇作家、詩人にして駐日大使も務めたポール・クローデルの手記。在任中に関東大震災に罹災し、その様子も書かれているというのでかなり楽しみにしていたが、残念ながら全然合わなかった。本作は言わば日本を題材にした「詩」であり、日本人なら馴染みのある文学や美術、能や歌舞伎、相撲、自然などを語っている。しかし、およそ日常会話で使うことのない、比喩的で観念的で勿体ぶった言葉で形容されるソレは、何について話しているの?と正直言えば意味不明に聞こえる(続2021/10/14
ひろただでござる
1
アンドレ・マルローもやけど日本の自然や文化の理解の仕方がプライドと合理性から来ているのか…独特。神社の神聖を理解した表現は読んでいて「なるほど…」と納得。「知性によって到達できないものを素直に受け入れる」のが日本人の特色だという。少し持ち上げ過ぎな気もするけど悪い気はしない。日本を好きになった西洋人に共通する(昔からの)日本らしさを無くすくらいなら無理に近代化(西洋化)しないで…が所々で見られた。「唐辛子 羽をつけたら 赤とんぼ 芭蕉」の俳句の紹介がそこに至る静謐な文章との対比で大笑い。2020/11/13
ユキ
1
「劇、それは何事かの到来であり、能、それは何者かの到来である」。能楽堂に入った瞬間から能は始まっている。私たちは待っているのです。あなたに会えるのをずっと。2013/06/03
翔
0
外国の方がが書かれた本だが、日本人について日本の文化について鋭い洞察力をもって書かれている 2013/02/20