内容説明
常世は、水平線の彼方に対する憧憬と死がまじり合ったもの。しかし常世は、祖霊の在す幽界や黄泉の国、そして沖縄のニライカナイともつながら。著者は、そうした世界が観念化される以前の原風景を求めて、補陀落渡海や浦島伝説、また産小屋の問題などに立ち向かう。新しい発見の感動に支えられて、柳田・折口両先学らの論を一歩進めようと、日本人の原郷意識に挑んだ谷川民俗学の代表作の一つ。
目次
海彼の原郷―補陀落渡海
常世―日本人の認識の祖型
若狭の産屋
南の島
ニライカナイと青の島
越の海
志摩の記
淡路の海人族
常陸―東方の聖地
丹後の浦島伝説
美濃の青墓
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
7
「アマテラスは天上界を支配する巫女であり、シタテルは冥界を支配する巫女であった。そうして天若日子が冥界の巫女に呪縛されたことが、アマテラスの怒りを買った」アマテラスが岩屋に籠ったとき「常夜往きき」闇夜になった。そこで常世の長鳴鶏を集めて鳴かせた。常夜と常世の違いについて本居宣長は同じ意味であると述べている。鶏は太陽に結びつける考えが流布しているが、常世の長鳴鶏という言葉を字義どおり解釈すれば鶏はむしろ常暗の世界に属する。それは太古、墓地の柩の場所を決めるのに黄色い鶏を連れて鳴かせたという事からも推察できる2021/03/01
Junko Yamamoto
1
南島の常世に関する説話は様々紹介されているがまとまった論旨にはなっていない。ー2019/09/07
たわらばし
0
常陸国のあたり、もっともっと掘り下げたものが読みたい。常世郷に言及しないのは何故なんだろう。
メーテル/草津仁秋斗
0
谷川健一が追い求めた、常世の姿。青=死と関わる地名説など、示唆に富んでいる。今読んでも価値のある本。2015/12/22
Chihoish
0
谷川氏の力強い文章が大好きです。記紀、神社、地名など引き続き氏の著作を読みたい。2015/08/21