内容説明
障子に映る庭の木影、か弱い小さな虫、神社や寺院の無に至る参道―名もない庶民の生活の中のありふれた光景のひとつひとつに、詩人小泉八雲は日本人の心の営みのこまやかさ、優美な豊かさを、深い共感をこめて見出した。無類の共感で綴られたこまやかで優美な日本人の心。
目次
夏の日の夢
永遠に女性的なるもの
赤い婚礼
停車場にて
旅の日記から
阿弥陀寺の比丘尼
戦後に
ある保守主義者
コレラの流行期に
君子
生神様
塵
日本美術に描かれた顔について
人形の墓
大阪にて
虫の演奏家
草ひばり
焼津にて
漂流
乙吉の達磨さん
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まさにい
15
『むじな』や『怪談』以外には小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の作品は知らなかった。司馬さんの『アイルランド紀行』を読み、八雲がギリシャ生まれ、アイルランド育ちだと知り、妖精の国から来た人なのだと知る。妖精の国から来た異人さんは、日本人よりも日本を愛したことがこの本から窺えた。短編の論文(随筆)なのだがどれも日本を思い出させてくれる。この随筆の一つに日本の虫の音の話がある。僕は、PCでその虫を検索し、虫の音を聞きながらこの部分を読んだ。邯鄲の音がよかった。優しい気持ちになりながら、日本の行く末を考えた。2017/02/19
さか
12
八雲が生活していた風習とか書かれていた。本の中に浦島太郎の事が書かれていた。私の知っている浦島と前半が違っていた。「古事記に書かれてい事も知った。」2020/10/11
koike
12
私が大好きな国アイルランドで育ったハーンが、私の祖国日本を愛し、書きとめた日本のお話。日本人が西洋人に日本の心を教わるって不思議な感じでした。でも、およそ100年以上前の日本を知る驚きは、当時のハーンの、眼でみて心で感じたものと似ているのではないかと思う。読んだ後にこの本について話がしたい気分になるなぁー。2013/09/12
櫂
8
小泉八雲二冊目。外国人が描く古き良き日本の姿はやはり惹きつけられるものがある。それに惹きつけられた作者が書いている作品なのだから当然といえば当然だけど。西欧の文化の基礎となるギリシャと日本の比較が面白い。『日本美術に描かれた顔について』に示される、詳細な描写によらず、細部を削り落とすことで本質を描き出すという日本の慣習が心に響いた。私の中にも古い日本人がいたらしい。雨の日の蛙の声は、私にとっても心和ませる原風景だ。2014/05/31
テツ
8
西洋人のハーンによる日本を紹介し考察するエッセイ。日本を好きな気持ちが良くわかる。そこで生まれ育った者には解らない、外部からじゃなきゃ解らない良さって確かに存在するよな。ハーンが生まれ育ったアイルランドと彼が愛した今から100年以上昔の日本とには共通点があったのかな。彼が小泉八雲として書き残した数々の怪談っていうのは確かに彼が愛した日本的な要素が全て含まれているのかもしれない。2014/04/03