内容説明
「呻吟」とは、重病人のうめき声をいう。しかし、本書の著者呂坤のいう呻吟とは、個人の苦しみよりも、むしろ末世的現象の氾濫する明代社会の絶望的な病弊を憂慮して吐き出した警世の語である。本書を一貫する儒教思想の源流は『論語』であり、孔子一門の発言が2000年の歳月を経て蘇ったといえる。そこには悩める現代人の魂をゆする真実のことばが随所にちりばめられていることに気づくであろう。現代人の心魂に訴える異色の人生論。経世済民の書。
目次
呻吟語目録
呻吟語
呂坤略年譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kawai Hideki
77
中国の明時代後期の大儒学者・呂坤が、世の乱れや政治の腐敗を嘆きながら、理想の政治の姿、そして学問を志す者が目指すべき境地を数十年にわたって書き付けたメモをかき集めた本。「呻吟」とは重病人のうめき声の意。若干、観念的で理想論的な記述が多い傾向があるが、その鋭い矛先は現代を生きる我々の急所も正確についており、反省を促される。解説も興味深く、呂坤の生い立ちやキャリア、陽明学とも朱子学とも距離をおいた関係、二十年以上の間、毎日、その日に犯した過ちを振り返り書き付ける「省心紀」を続けた逸話など、読み応えがあった。2014/12/07
DEAN SAITO@1年100冊
7
本書をして「目覚めたものを緊張させ、緊張するものを安堵させる」と評した解説文に、はっと目覚めさせられるような感覚をおぼえた。エモいパンチラインにはどこで出会うかわからない。2022/05/12
くらぴい
2
中国の古典の教養ある官史が、実務をこなしつつ、理想の政治について、病人のうめき声のような寸言を語る本。重職につく人の評価の言が有名であります。2019/06/03
タワくん
2
何より解説が素晴らしいし、色々な『呻吟語』読んで来たけど、この荒木版が一番読みごたえがあった。ただ、『呻吟語』自体が、もう現代の情報社会の中ではあまり役に立たない感じを受ける。このブラック現代の「呻吟」は、明代の「呻吟」を追い越した感がある。2017/10/09