内容説明
フッサール現象学は単なる哲学の一方法論ではなく長い西欧形而上学の歴史における本質的な出来事であり、新時代の哲学の運命を決する特筆すべき事件である。本書は現象学研究の第一人者がフッサールの厖大な原テクストに独自の読みをほどこし、意識と存在・人間と理性・物と世界など現代思想の根本問題に清新な解答を与えようとする。初版刊行以来知識人に多大の感銘を与えた名著の、待望の文庫化。
目次
序章 現象学の出発の立場
第1章 前期現象学の方法と立場
第2章 発生的現象学とは何か
第3章 人間存在の問題
第4章 現代の現象学的存在論の問題
第5章 最後の思想的境位
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
有沢翔治@文芸同人誌配布中
11
フッサールの『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』と『デカルト的省察』を中心に丹念な読解が好印象。最近のポストモダン哲学にありがちな飛躍は余り見られず、決して解りやすくもない。ガリレオ以降の自然哲学(≒物理学)は過剰に客観性を重視していたが、フッサールは内面の厳密な記述を目標とした。一見、フロイトと似てるものの、目的が違う。フロイトは治療が目的で、フッサールは学問の批判が目的。http://blog.livedoor.jp/shoji_arisawa/archives/51501658.html2018/11/11
グスタフ
6
いままで、多くの現象学入門的な本を読み漁ってきたが、ようやく古典的決定版にたどり着いた。フッサールのたどった思索の紆余曲折を筆者は、「挫折と転回」そして、「悲劇的な分裂」とまで呼んでいる。そこを丹念に読み取り、描き出している点でやはり、群を抜いているのだろう。実は、並行して「存在と時間」を、ゆっくりと読んでいる。当然、フッサールの思索の延長線上にハイデガーが、位置づけられるのだが、それがよく分かり、理解が深まった気がする2012/01/28
NICK
4
タイトルから現象学の入門書かと思っていたのだが、実際は非常に専門的な研究所だった。自分のような初学者には難解な高度な内容。フッサール自身が前期思想をいかに修正し後期思想に至ったかをつぶさに検証し、現象学が凝り固まった学ではなく一つの運動であるということを論じている(らしい)。現象学はソシュール言語学やニーチェなどとともに近代科学批判の文脈から産まれたというが、学を批判するための学が(だからこそなのかもしれないが)かくも厳密な議論によって成り立っているのかと恐れ入った。2012/10/27
transzendental
2
入門書のような書名だが本格的な研究書なのでその点は注意。主に「経験と判断」あたりに焦点を合わせて書かれたものと思われる。難解だがとても面白い本。
hitotoseno
2
フッサール現象学に向けられた現象学的分析。単に羅列して紹介するではなく、フッサールの道程を当人が払った労苦をそのままに遡行するため、現象学に求められる姿勢と同様ダイナミックに展開されていく。時にフッサールさえエポケーしてみせる姿勢はまさに哲学であり「批判」。2011/10/25