内容説明
藤原氏栄華の礎を築き、数々の美徳をそなえた好人物とされる師輔の真の姿を浮彫りにし、専制君主白河法皇の激しくも淋しい生涯に迫る…。後宮の栄光に溢れた優麗典雅の生活あり、争いに敗れ鄙に隠栖する悲しき女性も垣間見える。平安の都を舞台に繰り広げられる人間模様を、多くの文献の読み込みと深い洞察で語る学術エッセイ。
目次
第1部 春にかすめる(平安の春;師輔なる人物;花山天皇と熊野 ほか)
第2部 花の散るのみ(四条宮下野;白河法皇;院宮の女房たち ほか)
第3部 春し暮れなば(薄倖の后;義経と平泉;実朝の首 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅてふぁん
36
平安の都を舞台にした学術エッセイ。『紫女と清女』を目当てに手に取る。藤原師輔(道長の祖父)を『美徳を備えた理想的な人物(P14)』と紹介したすぐ後で『いと淫(たわ)しき』…ん?かなりの色好みだったのか(^^; 他にも王朝貴族の恋についてや、白河法皇と鳥羽天皇、中宮璋子の三角関係についてなど、どれも面白かった。平安後期から鎌倉にかけての史実を詳しく知りたくなった。巻末で瀬戸内寂聴氏が『面白くてやめられない名著(P324-)』と書かれているのにも納得。平安の都に住まう人々に興味がおありの方は、ぜひご一読を♪2018/02/12
sofia
35
学術エッセイと裏に書いてありますが、「エッセイ」のように軽く読めません。でも、解説で瀬戸内寂聴が書いてある通りおもしろいです。角田氏の『待賢門院璋子の生涯―椒庭秘抄』を読んでいるので、白河法皇たちの話は知っていたが、この方は平安の世をタイムトラベラーになって見てきたかのように文章にしてくれる。そしてそれもワイドショーのように。多くの史料を読み込んでの推察がわかりやすくておもしろい。2022/01/12
午睡
11
正月の愉しみに大事にとっておいた本。丸谷才一がたしか山崎正和との対談で日本史の本として屈指と持ち上げていた記憶があるが、一読三嘆、さすがにその通り。抜群に面白く勉強になる本だった。この角田文衛という人は方法論的には文献学、あるいは文献史学というものらしく、厳密な考証で、たとえば白河法皇の愛人だった待賢門院の生理日まで同定し、産んだ子が白河の胤なのか鳥羽の胤なのかまで見極めるのだから面白くないわけがない。若き日にイタリア留学をしているせいか平安期をとらえるにしてもどこか視点が違う。よいお年玉の本となった。2021/01/09
紫草
8
積読15年、やっと読み終わりました。カバーの紹介によると「(略)平安の都を舞台に繰り広げられる人間模様を、多くの文献の読み込みと深い洞察で語る学術エッセイ。」文章は硬めで、そんなに読みやすくはなかったけど、おもしろかったです。きっと、筆者の頭の中では、この平安時代の人々は文献のなかだけにに見える歴史上の人物ではなくて、ちゃんと生きてた人間なのでしょうね。(実際そうなんだけど。)すごく愛情とか尊敬とか、そういう情を感じました。なので、おもしろかったし、この時代の人たちのことをもっと知りたくなりました。2015/06/05
りー
6
生々しいなー、というのが、第一印象。巻末解説で瀬戸内寂聴さんも触れていますが、「平安のワイドショー」という感じ。自分が生きていない時代の出来事をそんな風に読めるのは、ただ事ではないと思います。色々「えっ!そういう人だったの?」というビックリが登場しますが、存在感スゴいのはやはり白河法王。摂関政(母系)→院政(父系)→院が重用した武家の台頭。あー、そうかと納得しつつ、その激しさに震えました。2018/04/28