内容説明
釈尊の入滅後、仏教は各地へ伝播しやがて六世紀には日本へも伝来した。しかし、インドと遠く隔たる日本へ遙かな歳月をかけて到達したのが、釈尊の説いたままの仏教であったかと問えば、答えは否である。釈尊はもともと何を教え、どこへ導こうとしたのか?偶像ではない人間釈尊の言と行とに、その本音を探る。
目次
1 インドにも「諸子百家」がいた
2 釈尊の立場と伝道
3 過去の因習を超える
4 日常生活に根ざした教え
5 男女平等を説く
6 国家・国王との関係
7 俗世と出家
8 霊魂を否定し、無我を唱える
9 ブッダになることを教える
10 出家者の正しい生活態度
11 釈尊後の仏教
12 大乗仏教の誕生
13 意識下の世界を見る
14 ブッダになるために
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モリータ
10
◆原本1983年講談社出版研究所刊。講談社学術文庫版(本書)2002年刊。著者は駒澤大学名誉教授。◆概説的な釈尊 伝・初期仏教論。古代インドの思想史的背景にも触れる。リハビリ的にざっと読む。ドッグイヤー・引用は特になし。ただし有名な経文についてはメモ。◆「七仏通戒偈」(諸悪莫作…)は「法句経」183偈:本書80頁、岩波『ブッダの真理のことば・感興のことば」36頁。◆農耕者バーラドヴァージャと釈尊の対話は「スッタニパータ」第4経:本書129-31頁、岩波『ブッダのことば』23-27頁。2022/06/11
壱萬弐仟縁
5
活字はやや大きめで読みよい。古代インド人は肉体は不浄と認識(36ページ)。釈尊は道の人で、人に平等に接し、説法し、弟子とともに修行(73ページ)。弟子に寄り添うのがよい。現代の家庭教師的な感じだから。古代中国で、民主主義の民主は「民の主」で「民が主」でなかった(123ページ)。民が主ということの困難さは現代も続いているのが残念なところか。釈尊は離欲をいい、欲から一定の距離を保たないと欲に溺れると思っていたようだ(137ページ)。蛸壺に埋没しては偏狭な人間になるからである。縁起は相互依存(169ページ)だ。2012/12/31
UK
4
人間仏陀を書く、と冒頭にあって歴史小説風の表現を期待してしまったが。 内容は大学教授らしい史実に基づく情報をわかりやすくまとめたもの。元々の釈尊の教えは自然の法を説いた合理的なもので、自然科学や物理学との 相性が良いくらい。今の膨大で複雑怪奇な仏教の宗派とはほど遠い。シンプルで美しい物理方程式が、無限の応用商品を生み出す様を思わせる。今までの誤った思い込みが色々是正された。素材が最高に興味深いんだもの、仏陀の小説も探してみようかな。 2014/02/24
玖良やまだ
1
いつもとは違う道で、頂上に登った感じだなあ。2017/02/18
Hisao Chugun
1
いわゆる初期仏教についての解説書。後世、大乗仏教においに形作られた神格化され、神通力を持ってしまった『仏陀』ではなく、生身の人間・釈迦がなにを悟りなにを伝えようとしたかをわかりやすく解説しています。仏教の基本は「中道」と「縁起」。極端を排する。そしてすべてのものは、因と縁があった果があると考えます。スピリチュアルな宗教を胡散臭いと思う人ほど手に取ってほしい本。原始仏教はスピリチュアル臭がほとんどありません。 2013/12/06