ラテンアメリカの文学<br> 夜のみだらな鳥

ラテンアメリカの文学
夜のみだらな鳥

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  • サイズ B6判/ページ数 463p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784081260119
  • NDC分類 963
  • Cコード C0397

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

zirou1984

55
久々に出会ってしまった、圧倒的な狂人文学。畸形の赤子のために国中の畸形を集め迷宮屋敷と化したリンナコーダ、かつては屋敷の使用人だった老婆の群れが暮らすエンカルナシオン修道院、この二つの舞台はどちらも冥府そのものの禍々しさに満ちている。語り手でであるはずの私は執事であれば幼児でもあるし、老婆でもあればお前でもある。あぁ、何なんだこれは。覚めても抜け出せぬ悪夢の様な混沌とした語り口は、絶えざる自己否定の強迫観念に囚われて出口はない。穴という穴を塞がれた生物、インブンチェそのもののおぞましさに満ち満ちている。2014/10/19

mii22.

49
無秩序で異様な世界。プロットはあるように感じるが定かではない。一人の老人の独白によって構築されているが時に歪み他のものに変化したりする。時間や空間もそこで繰り広げられる事柄も現実と妄想が混沌としている。畸形の楽園リンコナーダと、老婆と孤児が収容されているエンカルナシオン修道院という外界から閉ざされた二つの場所はまるでお化け屋敷か迷路のようだ。読み手の意識は悪夢の中に埋もれ酩酊する。物語に登場する体のあらゆる穴を縫いふさがれた怪物「インブンチェ」には全てにおいて閉じられ闇へと墜ちていく恐怖と戦慄を感じる。2016/06/14

Gotoran

44
冒頭、語り手ウンベルトペニャローサの語りで始まるものの、その後(実は同一人物の)ムディートという口・耳が不自由な老人の独白へと・・・奇怪な妄想的世界(支離滅裂、狂暴、執拗な反復)が延々と続き、視点の変容、登場人物の変身、時間的・空間的転移もあり、ありえない非合理、不条理で幻夢的・迷宮的な物語が進行。名門アスコイティア家の当主ドン・ヘロニモが所有する、畸形の巣窟、リコンナーダの屋敷。伝説の妖怪インブンチェに倣って赤子の世話をする7人の魔女が隠れ住まうエンカルナシオン修道院。様々な暗闇の情念に↓2015/01/12

長谷川透

41
ウンベルトの肉体の解体に呼応するかのように物語は分裂を重ね、憎悪の声は分裂と共に増幅し、読者を渾沌の中に引き摺り込む。「悪夢のような」と形容される小説は星の数程あるだろうが、『夜のみだらな鳥』を読むことは悪夢を見るのと殆んど同義だと言っていいように思う。ドン・ヘロモニの悪魔的世界の構築と、《ムディート》のそれへの抗いにより波状のように拡大する悪夢の世界。エピグラフにある<夜のみだらな鳥が啼く、騒然たる森>の中を、書を読み終えてもまだ彷徨しているように思う。成程、人生は本質的な空虚とは言い得て妙である。2012/12/06

tomo*tin

36
久々に徹底的にわけが分からない。境界が曖昧だなどというレベルでは無く、本書においては境界は存在しない。妄想も幻想も現実も過去も未来も全てが融合している。魂は自由自在に行き来する。目に見える世界は意識の一片にすぎないのだ。「ここ」が何処で「おれ」が誰なのか、異形と正常は入り乱れ、美醜は手を繋ぎ飛び歩き、悪夢が悪夢を呼び、最終的には何でもありで、潜り込んだ私は眩暈の連続である。グロテスクで淫靡な「みだらな鳥」たちが脳内に巣を作り異形を育む。意識は分裂し世界は分断される。何という気持ち悪さ。でも、素敵。2009/06/27

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