出版社内容情報
波瀾万丈のドラマに武士精神の壮絶美を謳う時代浄瑠璃の傑作選
近松といえば当時の現代劇である世話物が人気がありますが、彼は一方で時代物(=時代劇)をその三倍も書いています。起伏に富んだストーリーを緊密な構成と凝った文辞で展開し、大掛かりな仕掛けで楽しませてくれるものでした。世話物をみごとに映画化した篠田正浩氏も、近松の真骨頂は時代物作品の内にあると喝破しています。 ここでは時代物の代表作を選びました。平家物語や曾我物など先行作品に依拠しつつ、独自の人間ドラマを描いた「出世景清」「曾我会稽山」「平家女護島」、日中にわたる雄渾なスケールが大評判となった「国性爺合戦」、古代の宗教戦争を活写した「用明天皇職人鑑」、お家騒動に絡めて権力と芸術の戦いを描く「けいせい反魂香」の六作です。
鳥越 文蔵[トリゴエ ブンゾウ]
著・文・その他/翻訳
山根 為雄[ヤマネ タメオ]
著・文・その他/翻訳
長友 千代治[ナガトモ チヨジ]
著・文・その他/翻訳
大橋 正叔[オオハシ タダヨシ]
著・文・その他/翻訳
阪口弘之[サカグチヒロユキ]
著・文・その他/翻訳
内容説明
多彩な趣向と波瀾に富んだ展開で、情と義が相克する人間の悲劇を描ききった傑作群。竹本義太夫との提携で新浄瑠璃の誕生を告げた「出世景清」、三年越し十七か月の長期興行という大当り作「国性爺合戦」など、近松時代物の代表作六編を収録。
目次
出世景清
用明天王職人鑑
けいせい反魂香
国性爺合戦
曾我会稽山
平家女護島
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syota
28
『国性爺合戦』を読む。スケール大きく奇想天外、荒唐無稽だがとにかく面白い痛快冒険活劇。江戸時代の人達には、多分文句なしに楽しめた内容だろう。現代人の目からは、異文化を尊重せず日本が最高だと信じている島国根性と、日本は神の国という神国意識が気になるが、鎖国中の江戸時代に国際感覚を求めるのがそもそも無理な話。むしろ、この島国根性と神国意識が明治以降も抜けきらず、むしろ増幅されてしまったところに近代日本の悲劇があったのだと思う。どうしてもあの無謀な戦争を連想してしまうが、余計なことは考えず素直に楽しむのが吉。2017/12/23
アンゴ
1
国性爺合戦を原文で読みたく手に取る。分からない語彙は注釈が本文上に載っているし、なんとか文法は理解できる。現代語訳は、原典のリズム感が損なわれるので見ない方がよい。浄瑠璃の名調子を考えて紡いだ近松の傑作一つ。五幕で思いのほか集約されていた。2018/02/10