内容説明
中国人はものごとを現実的に見、考える民族である。三千年の思想の歴史を通じて培われたかれらの考え方は、中国人に特有な思考形式として今日に伝わる。それは老荘の現実関心や儒仏道教の現実尊重の思考に根ざす現実合理主義であり、また両面思考、中庸、死生一如、天人合一などの思想である。本書は中国思想の特色となるテーマを取り上げ、平易に説明し、現代の立場から吟味を加え、現代に生き未来を開く積極的な意味をさぐる。
目次
序章 中国の伝統思想と現代
第1章 現実の尊重
第2章 儒家的合理主義―孔子の思想を中心に
第3章 対待―両面思考
第4章 中庸
第5章 死生一如
第6章 天人合一
付録 中国思想
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tomoichi
21
中国人はなぜ現実主義的思考をするのか?儒教を中心に仏教・道教を媒体に解いていく一冊。儒教の発展過程も理解でき、特に中庸については勉強になった。中国人と仕事をする方は是非!2018/07/04
俊
19
儒教を始めとする中国思想は、現代において生きた哲学としては使いどころがないと思われがち。しかし、多数決で全てが決まり少数を切り捨てる民主主義や、科学が人間を支配しているかのような科学万能主義の時代である現代だからこそ光るものがある、という趣旨の新書。中国思想には現代の価値観とは相容れない部分や過去科学の発展を阻害した面もある。しかし、人間の生活に即した実践と政治の重視、分からないものは一旦遠ざけるといった現実主義や、あらゆる物事は二つの相対するものから成り立っているという概念等、魅力的な部分もまた多い。2014/05/23
Hatann
9
再読。中国思想の特色が現代にて新しい積極的意味を持ちうるかを試論する。孔子の「鬼神を敬して遠ざける」態度を儒家的合理主義と名付ける。必要以上に事を荒立たせずにそっと無視する現実的な対応は生活の知恵であり、物事をカッコに括りながら走ることも重要だ。物事を両面的に捉えて柔軟性のある「中」を良しとする「中庸」の考えも中国の最重要な特色のひとつ。中国における無人格的な天の役割を西洋における自然法と対置する指摘も面白い。「天」は「神」ではなく「法」だ。「墨家」が消えた理由や「法家」が敬遠された理由にも触れたい。2019/05/16
くまくま
7
儒家、道家が中心テーマ。古代中国思想は日本をはじめとする東アジア地域に多大な影響を与えていたが、現代では両国間に政治・文化など多方面で隔たりがあるように感じる。思想の根底に触れることで、両国の共通点、相違点に気づかされる。中国人は現実的、日本人は理想的ということが特に気になった。2019/05/13
ア
5
筆者が考える中国(源流)思想の特質についてあれこれ論じる。初学者は末尾の付録を先に読んだ方が、流れが分かってよいかもしれない。2021/07/09