内容説明
敗戦直後、日本社会党が誕生した。戦前の無産政党を糾合し、「社会主義国日本」を目指しての結党である。しかし以後半世紀、一度として単独政権を打ち樹てることなく、ついに崩落した。社会党の歴史は、日米安保体制=自由主義陣営を打破する闘いとそれに絡まる路線・派閥抗争の軌跡でもある。ソ連型社会主義と共振するその「理想主義」は、議会制民主主義と相容れない側面をもっていた。日本社会党を通して、戦後日本の全体像に迫る。
目次
戦後社会主義の出発
「日米安保」を求めて
講和・安保に臨んで
60年安保の疾走
後期冷戦のなかで
冷戦終焉と日本社会党の崩落
日本社会党の「理想主義」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mazda
25
靖国、伊勢を軽視するリーダーのときには、国難が起きると言われている。オウム事件、阪神淡路大震災の際、時の首相は村山富市であった(東日本大震災の時は菅直人)。当時の官邸には、「緊急の事故や災害に即応できる仕組みが全くなかった」そうである。また、いわゆる「村山談話」によるおわびにより、国家として余計なエネルギーを使わされている。2013/08/19
Tomoichi
21
いやはや何と言ったらいいのか言葉が出ないくらい内部対立のうちに消滅した日本社会党、その成立から始まる内部対立を色々な角度から分析しその理想主義のデタラメを暴く。しかし残念ながら社会党前史の部分についてあまり詳しく説明がないので、共産党と労農派との相違や右派と自民党の三木武夫のような保守政党に行った国家社会主義者との相違などそこを理解しなければその後の対立が理解できないのでは。でも内容はめっちゃ面白い(笑)2018/11/14
ステビア
16
優れた社会党史であると同時に戦後政治史でもある。常に右派・左派、親ソ・親中といった内紛を孕んだ政党。終章ではSPDと比較し、日本社会党の姿勢は夢想主義ともいうべき現実との接点をもたないものだったと批判する。2020/11/19
モリータ
11
「本書は、歴代保守政党への最大対抗勢力でありながらその保守からついに「多数派」の地位を奪うことのできなかった日本社会党なる政党が、戦後政治にその足跡をどう刻んでいったのか、そしてそのことが戦後日本にとって、いや私たち国民一人ひとりにとっていかなる意味をもっていたのかを明らかにしようとするものである。(p.349「あとがき」)」◆2000年刊、著者は戦後日本の保守党政治史を専門とする国際政治学者。非常に明瞭かつ含蓄のある文章。特に第五章冒頭の内容・書きぶりは銘記される。◆以下、引用。2021/05/11
ア
9
55年体制下の最大野党・日本社会党の変遷から戦後政治史を見る。マルクス・レーニン主義を信奉する党内の左派が、現実と乖離した理想主義(夢想主義)に陥りながら、党の主流を占めてゆく。国際政治・外交史が筆者の専門のため、社会党の外交がかなり分厚く論じられている(第6章など)。最大野党としての社会党が西欧社会民主主義的な現実路線を取り得なかったことは残念なような気もするが、イデオロギー堅持が社会党の一定支持獲得の所以であったことも考えると、なかなか判断が難しい。現在の野党も、いかに振る舞うべきか…2021/08/09