内容説明
戦禍のロンドンから、海辺のコテージ「千鳥荘」に疎開してきた、上流階級の姉妹ローズとダイアナ。この千鳥荘には「狂人ヒルダ」と呼ばれる女性が住んでいたせいで、疎開者が居着いたためしがないという。妹のローズは偶然から、ヒルダの持ち物がしまいこまれた小部屋に入るカギを見つけ、ヒルダの日記を読み始めた。そこには、戦争と家族の犠牲になった、一人の聡明な女性の生涯が克明に記されていたのだった。そして、ヒルダの秘密が、ローズの人生にも大きくかかわり始め…。世間からさげすまれている未婚の妊婦ドット、書店の主人アレク、近所に住む親切なクラレンス夫人など、さまざまな人々との交流を通して、淑女のお手本のような姉ダイアナも、自由な精神の持ち主ローズも、真実の愛、そして、人生の目的を見いだし、大きく成長していく。英国の海辺の町を舞台に、少女たちの愛と成長を軽快な筆致で描く、青春ドラマ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぱせり
9
自分を愛し、自分をかけがえなく思えなければ、人を愛することも愛されることもきっとわからない。二つの大戦のなかで勇気を持って前を向こうとした二人の女性の物語の重みが、主人公を豊かに成長させました。「女でよかった」に胸が熱くなる。魅力的なミス・ヒルダ、いないことが信じられないほどの存在感。あの指輪は、一番相応しい指にはまりましたね。2010/11/11
星落秋風五丈原
8
戦禍のロンドンから、海辺のコテージ「千鳥荘」に疎開してきた、上流階級の姉妹ローズとダイアナ。この千鳥荘には「狂人ヒルダ」と呼ばれる女性が住んでいたせいで、疎開者が居着いたためしがないという。妹のローズは偶然から、ヒルダの持ち物がしまいこまれた小部屋に入るカギを見つけ、ヒルダの日記を読み始めた。そこには、戦争と家族の犠牲になった、一人の聡明な女性の生涯が克明に記されていたのだった。2004/10/10
椿子
4
上流階級の姉妹二人が、疎開先の海辺の町で、自分自身の本当に好きなもの、を発見するお話。児童書なのに結構描いている事は直接的で出産シーンなんか、リアルすぎてびっくりした。それにしてもローズに近寄ってくるデリーという男の子のなんとへたれでずるいことよ……………。戦時下、というだけあって、皆国のために、と頑張っているのが背景にある厳しさを垣間見たような気がしてつらい。この物語のもっともっと先はハッピーエンド(戦争も終わって)であってほしい、と強く願った。2010/03/26
アリス
3
児童書になってるけど、児童書ではないと思う(そう思うシーンがあったので)・・・今読めばどうか分らないけれど、中1当時は嫌悪感を覚えた場面も。対象年齢15,6歳くらいからな気がします。少女の女性への成長と恋愛のお話だと思います。印象に残っている本。
AsK
2
え…これ児童文学だったんですか?!ちょっ…いろいろ赤裸々に書かれていて、中学生の頃読んだ私には赤面ものだったのですが。戦時下を生きる姉妹の妹が主人公の物語。当時身分差や歳の差を押し退けての自由な恋愛結婚は認められていなかったようです。世間の風当たりが強い中自らの恋を貫く女性と接して、まだ女の子の主人公が徐々に一人の女性へと成長していく。最初は姉に憧れていた主人公の遊び友達の男の子も戦時下において急速に大人びていき、同時に周囲から変わり者呼ばわりされていた青年への見方も変わっていく少女の物語。2011/11/10