出版社内容情報
道徳の存在は不思議である。動物には道徳はないが立派に集団生活を営んでいる。だが私たちの社会は道徳がなければ存立しないように見える。著者は、道徳は人間の「自然本性」に属さないにもかかわらず、ある段階で「自然本性」に親和するように成立したと考える(自然主義)。その立場から進化論や大脳生理学の知見を参照して、道徳の成立を発生史的に追求する。更に道徳が感情という面で問題になること(道徳感情論)、事実と価値の関係(道徳は価値に関わる)、倫理学説の三類型(結果主義、義務論、徳論)などを論じる。著者の長年の思索の結晶で
序章 問題設定
1 問題の意味
2 人間にとって無道徳であることは可能か
3 進化論と倫理学
第一章 方法論的指針
1 倫理的知識の要件
2 以上の議論のいくらかの応用
3 付加的なコメントとこれからの道筋
第二章 「自然的」から「道徳的」へ(道徳規範の地位)
1 自然的存在から道徳的存在へ
2 自然的なことと道徳的なこととの差異
第三章 自然的なものと道徳的なことの共存
1 ゲーム理論の教訓
2 ヒューム的な人間像
第四章 進化論と人間本性
1 道徳の自然主義的理解
2 人間本性という概念はどの程度まで支持しうるか
第五章 道徳感情論を支持する科学的知見
1 大脳生理学からの議論(ダメイジオの議論)
2 社会的感情・道徳感情論(心理学的な知見)
第六章 道徳感情論の問題
1 いわゆる自然主義的な立場ということについての若干の説明
2 スーパーヴェニエンスという考えの分析
3 道徳的実在論の却下とそれに替わる立場としての準-実在論
4 ヒュームの道徳論の解釈
5 エモーティヴィズムの却下
第七章 「よきこと」、「正しきこと」は客観的に定まるか
1 価値評価の客観性について
2 ヒュームにおける意志概念について
第八章 道徳感情論の位置づけ
1 道徳説の分類
2 アリストテレスの倫理説(目的論の一例として)
3 カントの道徳論(義務論的倫理学の典型として)
4 要約
第九章 エピローグ
1 徳論型倫理学の現状について
2 徳論型倫理の基本的性格に対する誤解について──
他の立場との比較
3 徳論型倫理に特徴的な考え方
4 徳についてのいくらかの説明
5 おわりに
注
あとがき
文献
人名索引/事項索引
内容説明
人為的な正義の徳が、いかにして人間の「自然本性」に即して成立するのか。進化論や大脳生理学などの知見を参照、道徳感情論、事実と価値、道徳理論の類型等を論じる。
目次
序章 問題設定
第1章 方法論的指針
第2章 「自然的」から「道徳的」へ(道徳規範の地位)
第3章 自然的なものと道徳的なことの共存
第4章 進化論と人間本性
第5章 道徳感情論を支持する科学的知見
第6章 道徳感情論の問題
第7章 「よきこと」、「正しきこと」は客観的に定まるか
第8章 道徳感情論の位置づけ
第9章 エピローグ
著者等紹介
神野慧一郎[カミノケイイチロウ]
1932年長崎県佐世保市に生まれる。1965年京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。現在、大阪市立大学名誉教授
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