内容説明
本書は、子どもの遊戯療法事例の実際を一つひとつ提示し、それぞれに河合隼雄がコメントを加えるかたちで構成されている。本書の画期的な意図は、事例とコメントを有機的に組み合わせることによって、遊戯療法の本質そのものを明らかにしようとすることにある。遊戯療法は遊びを通して行うイメージ主体の心理療法であり、その本質を理解するには、体系化された知識や理論を超えて、何よりも生き生きとした現場の感じを味わいながら考えを深めることが必要だからである。
目次
総論 遊戯療法とその豊かな可能性について
事例1 場面緘黙Z君の箱庭&プレイセラピー
事例2 パワーを求めて
事例3 プレイセラピーにおいて「遊び」が「遊び」でなくなる瞬間―集団になじめない小学校高学年男子の事例を通して
事例4 遊戯療法としての「遊び」を可能にする視点
事例5 自分らしくあるということ―いじめられる啓太君の事例を通して
事例6 三角関係を生き抜くこと―チックを主訴とする4歳女児とその母との関わりを通して
事例7 出生以来施設育ちの子のプレイセラピー―「僕はどこからきたの?」と問うまで
事例8 青いビニールボールに導かれたイメージの世界
著者等紹介
河合隼雄[カワイハヤオ]
1928年兵庫県生まれ。京都大学理学部卒業。スイスのユング研究所で日本人として初めてユング派分析家の資格を取得。京都大学名誉教授。文化庁長官、日本臨床心理士会会長
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
8
理解するのではなく受け入れる態度を作ることがクライエントの意識の深層に関わるには必須だという。それゆえ、本書を読んで理解できるなら、受け入れることに失敗したことになるのだろう。非言語的で非現実的な遊びのリアリティに接近するには、臨床家の修練を要する。臨床の初心者がある程度経験した者よりよい結果を引き出せる傾向があるのは、経験者が過去の臨床体験と比較して理解しようとする面が出てくるからだろう。本書は、箱庭やボールを含む8つの遊戯療法を行った臨床家たちの言葉に河合がコメントするという多層的構成を採っている。2023/02/01
星の子
1
遊戯療法はいったい何が起きてるのかわからないことがほとんどであり、初心者のセラピストにとっては不安が多い。本書を読んで、遊戯療法の疑問が解消はされないまでも、遊戯療法に対するイメージは掴めたように感じる。2015/08/02
とんぽー
1
遊びのリアリティ・・・「大人にとって遊びとは“本気でないこと”、”気晴らし”、”時間つぶし”などを意味しがちであるが、子供にとって遊びは、はるかに精神的な豊かさとリアリティ(現実感、臨場感)を備えた心的活動である。」とある。全くその通りである。現代社会が自然から切り離され、バーチャル化するなかで、豊かな遊びを科学し意図的に子供に環境を与える事は重要だとおもう。2012/03/15
餃子
0
事例も考察もコメントも全てがわかりやすく良かった!特に「受け入れる」ということの意味が明確になった。見逃す、勝手にやらせるは受け入れることにならない。私がそのことを納得していなくては駄目。〜せざるを得ないクライエントを受け入れることができるようになるのが、「受け入れる」ということ。2017/01/09