出版社内容情報
自由放任主義に基づく資本主義は、今なぜ危機に陥っているのか――。「市場の申し子」ジョージ・ソロスが世界に向けて発する警告の書。独自の論理で世界経済を牽引するビジョンを展開する、世界的な話題作!
内容説明
本書は現在の危機と経済理論全般を鋭く分析し、理論上の仮説が人間の行動とあいまって、いかにして今日の混乱に道を開いたかを明らかにする。また、市場の力に絶対的な信頼を寄せる結果がいくつかの重大な不安定要因からわれわれの目をそらさせてしまった経過と、そうした不安定要因が連鎖反応によって現在の危機―さらにもっと悪化する可能性もある危機―を引き起こした事情を解明する。
目次
第1部 概念的な枠組み(誤謬性と相互作用性;経済学批判;金融市場における相互作用性;歴史における相互作用性;開かれた社会)
第2部 歴史の現時点(グローバル資本主義システム;グローバル金融危機;崩壊を防ぐために;グローバルな開かれた社会へ向けて;国際的潮流;開かれた社会の課題)
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
2
著者がポパーの概念を使う時、批判的指標となるのは経済学(特に新古典派)が自らを自然科学と混同する態度だ。ポパーは論理学をチェックしつつ自然科学と社会科学を並行的に論じたが、著者は、ITによってバーチャル化しグローバル化するのに乗じて自らを自然科学と同等に扱い、そのベースの論理バイアスを強化して市場の不均衡を増大させる経済学を、社会科学の側から批判検討する。本書は「誤謬性」に加えて「相互作用」を強調し、金融市場にバイアスを生み出すこの「作用」が静的不均衡を動的なものにシフトさせた90年代金融危機を分析する。2017/02/25
さきん
1
彼自身はユダヤ系でナショナリズムによって疎外される経験を持ち、資本主義的手法で経済的にゆたかになったが、市場原理主義に関して厳しく批判している。ずいぶん資本主義的に周りから荒くお金を稼いできた彼にしては意外な感じがした。さて、彼は発言と行動が一致しているだろうか。彼の立場は一体なんだろうか?2015/07/05
DonaldTrump
1
前半は難解だが、中盤・後半は、なんとか理解出来るし、興味深くかつ面白い本(^。^) ソロス哲学は、「相互作用性」がキーワードだと思う。2012/02/28
ハルバルミチル
0
「開かれた社会」やアジア通貨危機の分析も良かったが特に面白かったのは社会科学、とりわけ経済学に対する批判だ。〈社会科学にはわれわれが自然科学に与えているような地位を得る資格がない〉とは痛快。蒙を啓かれたのは、〈(経済学を含む社会科学では)ある理論が人々の行動に影響を与えるのに真実である必要はない〉としたうえで、〈社会科学者は自然科学の権威を不正使用して、かなりの社会的、政治的影響を与えることに成功してきた〉という箇所。経済学の存在価値を良くも悪くも表現している。錬金術とのアナロジーも成る程。2016/01/11
Hisashi Tokunaga
0
現実は我々の理解よりも豊富であり、思考を驚かす。だから思考は現実を創造もするのだ。思考された現実こそ現実であることに、ソロスの現実感を見る。視覚映像の比喩から知的概念のゆがみは避けられないのだとする。