内容説明
楽興のおもむくままにベートーヴェンからシェーンベルクにいたるさまざまな今日的音楽の課題を、著者の哲学と音楽を軸とする精神の座標に定着したユニークな音楽論。
目次
ベートーヴェンの晩年様式
シューベルト
ツェルリーナへのオマージュ
『魔弾の射手』の諸形象
ホフマン物語―オッフェンバックの動機による
『パルジファル』の総譜によせて
夜の音楽
ラヴェル
新しいテンポ
ジャズについて
クシェネックの観相学のために
マハゴニイ
ツィリッヒのヴェルレーヌ歌曲集
反動と進歩
シェーンベルクの『管楽五重奏曲』
異化された大作―『ミサ・ソレムニス』によせて
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kthyk
20
この書に採録されている、シューベルトの音楽をはかなく脆い結晶質の総体、壮大なソナタ形式に対し、彼の形式は噴射された後の眩い白々とした静寂な世界、その音楽はブルジョワ自由主義社会に属さない異邦人的性格の投影としている。形式の特徴は接続曲(ポプリ)にあり、月並みなメロディの組み合わせであるならば、アドルノが大衆文化批判の対象とした作品に終わるが、シューベルトにおいては、彼の音楽的風土を特徴づけるもの、見かけの全体が崩壊する事によってはじめて駆動するような散り散りのものがより集まってできるような全体としている。2022/03/16