内容説明
東アジアの「近世」は、人と物の動きの激しい加速化で幕を開けた。新大陸や日本の銀、生糸や人参などの特産物、ヨーロッパから導入された火器、煙草やサツマイモなどのアメリカ産の作物―。これらは東アジアの諸地域を結びつけ、富を求める人びとの抗争を激化させるとともに、つぎの時代の新しい権力を生み出していった。動乱から秩序へと向かう東アジアの大きな動向のなかで、これらの物品のはたした役割を考える。
目次
「近世」の意味
貨幣への欲望―銀
南と北の花形商品―生糸と人参
戦争と技術交流―火器
新しい作物―煙草と甘薯
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nagoyan
18
優。著者は、中国の近世、日本の近世、朝鮮の近世を発展段階的に同一の性格を有するから、それぞれ近世にあたるとする考えを否定し、東アジアにおいて生じた大きな経済的社会的変動が生じた16世紀と、その結果、新しい秩序が17、18世紀を「近世」とする。これを銀という商品の流通。銃という武器。日・清の近世社会の相違(日本の停滞、清の人口爆発)の原因は、日・清の農村社会の流動性にあるとする。面白い。2022/05/31
まえぞう
16
3冊目は、銀や生糸、火器といった商品の動きに着目して、東アジアの「近世」に迫ります。世界史リブレットのシリーズは短いものが多いので、内容は深入りしていませんが、砂糖の場合と同じで、こういう商品に着目した歴史へのアプローチは、ある意味でわかりやすく、取っつきが良いかもしれません。2023/05/09
ピオリーヌ
13
16世紀~17世紀ごろの東アジアについて、豊臣秀吉やヌルハチ等の英雄ではなく、銀、生糸、人参、火器、煙草、甘藷等の物品から見ていく内容。キャッチーなテーマでありながらも考察は鋭い。1600年頃世界を席巻したアメリカ銀だが、同時期に石見銀山をはじめとする日本銀も世界の銀流通量の二・三割を占めており、それには朝鮮から伝わった灰吹法といわれる銀の精錬法が大きな役割を果たした。(同時期ペルーではアムルガム法が発達)他、火器や煙草等に関しても、ポルトガル等の西欧勢力も交えた東アジアの交流がダイナミックに描かれる。2020/10/20
あつもり
4
16世紀~18世紀の東アジアを銀、生糸・人参、火器、アメリカからの新作物を通して概観。後金(後の清)と明が争っていた時期は、双方が最先端の武器である火器の導入・製造に力を注いだが、清朝が成立し、強力なライバルがいなくなると技術革新は進まなくなり、むしろ騎馬・弓矢の習練が重視された。同時期の日本も同様に、戦国期は最新の火器が積極的に導入されたが、江戸時代になると支配階級のエートスとしての「刀」が重視された。そして19世紀に欧米と直面する清・日本は欧米の軍事力に驚くことになる。2021/03/19
†漆黒ノ堕天使むきめい†
3
東アジアだけに言えるものではなくアジア全体で言えることだが、西洋と同じような時代区分ではその時代を理解できない。 前半ではそのことが書かれていたが、これは歴史学者がしっかりと定義すべきこととなる。しかし歴史を区分するのに困難だと感じるのは当たり前だなと改めて気づいた。 ドルの名前の由来と円とウォン・両が純度の高いスペイン銀貨をアジアのお金として使われたことから来ているのは知らなかったので学べてよかった。2015/08/01