内容説明
氷河時代が終わり、温暖化する日本列島に桜前線のように広がった縄文文化。列島の自然のすみずみにまで適応し、一万年にわたり独特の変化をとげたこの文化こそ、日本の歴史の幕開けというにふさわしい。それはまた歴史の最初の主題が人間と自然の関係にあることを教えてくれる。自然に支配されるものから自然を作り変えるものへの成長。しかし自然はときに厳しい試練をもって応じた。人間たちは結びつき、補い合い、そして神に祈った。
目次
1 縄文文化の誕生(地球の運動と気候変動と人類文化;土器出現の状況 ほか)
2 縄文的生活の確立と繁栄(南九州における定住のはじまり;縄文と定住 ほか)
3 縄文人の生活と社会(食料の獲得;狩猟 ほか)
4 縄文的生活の行き詰まりと農耕への模索(安定と不安定;西日本の後晩期 ほか)
著者等紹介
今村啓爾[イマムラケイジ]
1946年生まれ。東京大学文学部考古学専修課程卒業。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。専攻、考古学。現在、東京大学大学院人文社会系研究科教授
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感想・レビュー
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井上岳一
1
薄い本だけど、中身は濃い。著者の今村さん、とても真摯な研究者だということがよくわかる。この本のおかげで、縄文の実像が理解できた。狩猟採取というと動物を食べているイメージが強いけれど、植物利用がかなり大きなウェイトを占めていたというのは、なるほどと思った。また、縄文から弥生への移行は、自然に営みに従う植物利用から、大量の労働力による管理的な植物利用への転換であったということ、そして、そのどちらも森林環境という日本の自然条件に適応した方法であったということ。この二つの指摘は、目からウロコだった。2015/06/13
crvmain
0
A5版100ページ足らずのブックレットながら、1万年以上にわたる縄文時代についての基礎知識を得る事のできる好著。 数年まえから始まった縄文文化礼賛は、日本列島の全土に言えるものではないこと、厳しい生活を送っていた現実を冷徹な科学者の眼で伝えてくれる。 佐賀県坂の下遺跡で出土した縄文後期のドングリが発芽したというトリビアもあって楽しく読める面も多い。2022/09/22
nowonme
0
縄文文化勉強用。北から来た縄文文化と、南から来た縄文(?)文化という流れをはじめて知る。縄文文化もこの20年でずいぶん研究が進んだという噂を聞くのだが、この本からの発展はどういったところにあるのか調べてみたい。2021/09/12
こうきち
0
面白いけど、難しい漢字にフリガナ無しはやめてほしい。あと、これを読むと「人間は肉を食べて生きてきたから、肉さえ食べていれば大丈夫」という話が、いかに怪しいものかわかる。2020/06/22