内容説明
平泉は東日本随一の大都市でした。京都風のかわらけを用いた宴会が盛んに行われ、中国渡来の白磁や常滑・渥美焼の壷類が珍重されていました。大路には、牛車が行き交い、祭の行列が進んでいきます。中尊寺・毛越寺には浄土庭園が造営され、束稲山には満開の桜花が吉野山に負けない風情を誇っています。このような、列島の内外にわたる交易の展開によって醸成された国際色・宗教色あふれる都市生活の風景が、最近の発掘・調査によって、地下からよみがえってきたのです。世界的にみても貴重な都市遺産の発見です。それに中尊寺金色堂の輝きをあわせみれば、ますます、豊かなイメージがふくらんでくることでしょう。
目次
みちのくの京都か、鎌倉か
1 平泉館・加羅御所・無量光院の三点セット
2 毛越寺・観自在王院の辺り
3 中尊寺造営の理念
4 地下からよみがえる都市生活の風景
5 都市近郊の暮し
世界文化遺産登録をめざして
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
45
平泉3冊目。東北大学教授よる本書は、実際に平泉を歩きながら主に遺跡発掘の成果を基に都市平泉の全貌を明らかにしている。世界遺産への登録が目指されていた2003年に書かれたものだが、まさに発掘調査の成果が続々明らかにされていた時期に当たる(登録は2011年)。その意味では現在進行形の途中報告の趣だが、次は何が発掘されるのかという当時の興奮が伝わってくる。本書の特徴は、現在の平泉の地図と、奥州藤原時代の復元地図が並置されていることで、実際にこの地を訪れるにはうってつけだ。今となっては京都や鎌倉に比べると↓ 2017/05/22
てん
15
奥州藤原氏によって建設された都市・平泉の全容を発掘調査で出土したものなどをもとに平易に紹介している。平泉は当時の京都へのあこがれが反映されている。数々の神社を勧請して建てていたり、京の祭りの様子を描いたり。奥六郡の豊かな自然から得られる産物もすごいが、そうまであこがれられた京都という都市もすごいものだ。今後の調査に期待するところも大きいようなので、研究成果が待たれる。中尊寺だけでなく、毛越寺、観自在王院、無量光院なども訪れたくなる。2021/10/26
笛吹岬
1
少し前の著作だが、平泉を知るには手頃な作品。柳之御所、中尊寺、毛越寺のそれぞれの地区ごとに発掘調査を中心とした研究成果をまとめてあるのは、良質な旅のガイドブックとしても使える。2012/08/30
sfこと古谷俊一
1
近年の発掘調査により、あるいは伝承の姿が覆され、あるいはまさか本当とはというのが確認された、「中世都市の先駆けとしての平泉」の理解の現況(2001年のですが)をまとめている。2010/10/16