内容説明
武将たちが、合戦を繰り返すなかで、新しい統一国家を築きあげる。その一方で村や町は焼き払われ、民衆は逃げまどうばかり…。戦国時代といえば、そんなイメージが強いかもしれない。だが、それは事実ではない。土豪をリーダーとする村々が「国」をつくり、町が自治都市(「所」)になったのが戦国時代である。そして、こうした村や町の運動が近世社会の基礎となる。京都の郊外、「洛外図屏風」に描かれた世界を舞台に、新しい時代が生み出されてゆくさまを追いかける。
目次
「国」と「所」の世界
1 村と町の結びつき
2 村・町の住人の力
3 「国」と「所」の誕生
4 「都市的な場」のかたち
5 「国」・「所」と天下統一
「国」と「所」から描く戦国史
著者等紹介
仁木宏[ニキヒロシ]
1962年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。専攻、日本中世史。現在、大阪市立大学大学院文学研究科助教授、京都大学博士(文学)
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感想・レビュー
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chang_ume
4
再読。今回は京都西郊「西岡」地域における「勝龍寺城」の意義を中心に。近世権力による地域社会の「乗っ取り」を通じた兵農分離のモデル提示は、畿内中心部を事例とするだけに説得力あります。画期としては三好政権。地域拠点としての宗教空間「勝龍寺」に隣接の城郭「勝龍寺城」建設は、すなわち上位権力「公」による自律的な地域社会「国」への楔を打ち込むような支配の介入を物語るものでしょうか。畿内の地域事例を基に、近世権力の成立を地域社会のダイナミズムから描き出す。非常に刺激的。2018/12/04
chang_ume
4
京都西郊「西岡」「大山崎」を事例に、地域編成と支配の中近世を描く。農村あるいは都市がそれぞれ「国」「所」として一揆的な集団原理を成長させながら、外部権力からも公的な性格を付与されていく。画期としては三好政権。都市を直接把握する方向性は次代の織豊政権に引き継がれる。全体的に中世から近世の飛躍を評価する立場でしょうか。冒頭で提起された「兵農分離」の問題は、近世権力による地域社会の「乗っ取り」として捉えられる。この理解は刺激的で面白かった。ただし事例からの説得力はどうかなと。結論部分はわりと力技でした。2018/06/03
ma3
1
本書はあえて「特殊地域」とも言われる京都近郊の村・町、その地域社会の様子を中世後期(戦国時代)を舞台に解き明かし、近世社会への展望を見出しました。 今住んでいる地域を題材にしている点で、非常に親近感を持って読めたのと、いろんな驚き・学びがありました。地域の土豪達が連携・結合していくところ。そこから抜け出すものが出たり。荘園領主(公家・寺社)や幕府等との関係作り、等々。そんななか、彼ら土豪と同じ姓の方々(子孫なんでしょうね)が今でも地域の名士だということもこの地域の歴史の積み重ねの深さを感じます。2013/03/31
星規夫
0
小冊子戦術第四弾。日本史ってムズカシイヨー。2012/07/29
紙魚
0
大山崎などに詳しい。読んで、歩いて確かめる。この楽しみはここから。この時代の町がも大名どもに打ち勝ってたら面白かったろうな。