内容説明
日本の近代史は、移民活動をぬきにしては語れません。中国人ほどの数ではありませんが、ハワイ、アメリカ本土やカナダをはじめ、メキシコ、ブラジルなどの中南米、朝鮮、満州、中国本土、ロシア極東、樺太、南洋群島、東南アジア、オセアニアと、日本人の移住先はひろい範囲におよんでいます。日本人は、いつ、どこへ移住し、どんな仕事についたか、移住先の地域の性格にどのような違いがあったか、また異民族の社会でどのような苦労をし、いかに努力して人生をきりひらいたか…。そうした関心にそって、近代日本の移民活動を全体的に見たものです。
目次
移民からみる近現代の日本社会
1 海を渡った日本人(移民とはなにか;移住先の三類型 ほか)
2 近代日本の移民活動(移民史の時期区分;第一期―端緒的移民期 ほか)
3 職業と個人史(移民の職業;娼婦の存在 ほか)
4 地域・民族・国際関係(移民をめぐる思想と組織;長野県と移民活動 ほか)
著者等紹介
岡部牧夫[オカベマキオ]
1941年東京生まれ。成蹊大学政治経済学部卒業。専攻、日本近現代史(政治史・植民地史・国際関係)・環境史。現在、著述業
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感想・レビュー
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ののまる
7
明治から戦後のいままでの、海外移住をした日本人たち。いまは移民受け入れに転じている日本だが、海外での差別や様々な苦労などをしていた時期のことも、国策として行かされて棄民されたことも、ほぼいまに継承されてないので、いま日本にくる労働者に、とっても冷たい。少子化で、移民労働者なくして、もう社会が成り立たないのに。2024/03/06
たぬきのしっぽ
3
南北アメリカ大陸から朝鮮、満州、南洋など近代において日本人が移住した地は多様である。従来、移住先別に分断して捉えられて来たそれらの活動を、「移民」という概念に包括した上で、その全体像を素描する試み。移民の成立からその社会化、そして国策化という時代的な流れ。その流れと、移民の階層・移住先地域・送出し地域の変遷が、有機的に結びつけられて解説される。北米の排日移民法(1924)によりブラジルへ、ブラジルの移民二分制限法(1934)により満州へ、という流れが分かりやすい。早い時期に満州へ多数移民していたのは意外。2011/01/22
ハチアカデミー
2
日本の移民史の全体像がコンパクトに提示される。いつ、どこから、どこへの移動が行われたのかを示す14~17頁の表がとても便利。1899~1937年の移民数が多い都道府県は、多い順に広島、沖縄、熊本、福岡、山口、和歌山、福島、北海道。渡った先は、東アジア以外だと、ハワイ、ブラジル、アメリカが多く、他、ロシア/ソ連、フィリピン、カナダ、ペルーが続く。統計から見落とされるものは多々あるが、統計から見えてくるものもあるし、その移民を介しての交流が、いまなお国家間に与えている影響も大きい。机上の一冊決定。2015/12/06
三山
2
リブレットには珍しく、概説的なことがバランスよくまとまっている。幕末にビザもパスポートもなしに政権の空隙を縫うようにして海を渡った日本人から、国家事業としての移民送り出しが終わる94年までをまんべんなく記述している。南米のプランテーションで働く農民ーーそれだけではない日系移民へのイメージの修正を図るためには適切な入門書であると思う。2015/03/11
もっふる
2
フィリピン革命の話を読んで日本移民が近代のアジアで良くも悪くも活躍していたことを知り手に取った本。移民というと満州と南米などに分けられて現地での個別の話になりがちなので移民政策がどのように進んでいったか、民間ではどんな流れがあったかなど資料とともにまとまっていて便利。移民について調べたいときにこの本を足がかりにするのがおすすめ。各国での個人の活躍の部分はこまぎれな感じがしたが導入としてはこのくらいがいいのかも。2013/03/07