内容説明
近世の後半、町人の哲学として生まれた“心学”は、儒教・仏教・神道・道教の説を取り入れ、庶民の日常生活の中に道徳の実践を説いて発展したが、それは日本が近代化に成功した要因の中でも重要なものの一つであろう。本書は、その開祖石田梅岩の生涯と根本思想について、最も信憑性の高い史料を駆使しながら、平易・簡潔に述べた詳伝である。
目次
第1 おいたち
第2 志学の動機
第3 体験と反省・開悟
第4 開講
第5 日常の生活
第6 梅岩教学の根本
第7 晩年の生活
第8 修行の要諦
第9 終焉
略年譜
感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
4
本百姓の出身。内向的。気鬱症。倹約。積小為大。心学でこころを知る。こころを治す。学問の究極的な目的は文字を離れたところにある(70ページ)。『都鄙問答』で心性と天地は本質的に一つと考えた(98ページ)。正しい商人の道は、天下の人々の奉仕(105ページ)。最初から金儲けではないのだよ。どこかの自営業も。終生独身。奢侈は封建社会では資本主義社会と違って経済破綻の原因に(131ページ)。商人である前に、偽善でない人間たれ、とのメッセージを受けたような感じがする。開き直り、蛸壺に暮らしている商人は彼を学ぶとよい。2013/02/23
ペンポン
1
都鄙問答にも少しは触れているが、石田梅岩について詳しく書かれた本である。自宅で講釈を始めた時、黒柳家はもう辞めていたのかどうかが疑問として残った。常識的に考えれば辞めていることになるのだろうが、記述がないと決められない。2019/07/20
非実在の構想
1
特定の師につくことも正統な学問方法を身につけることもなく、独学で身を成した在野の学者石田梅岩。空疎なそれ自身が目的となった学問を行うのではなく、自分の人生に活かすため己の性を知ろうと学問に励んだ。 学問のための学問を学問する道が絶たれた今、糊口を凌ぐためあくせくしなければならないとはいえ、向学の志は止み難く、梅岩を師表として独り励んでいくしかないのではないか、と思った。2018/05/07