内容説明
犬公方・綱吉は名君か暗君か、それとも単なる偏執狂だったのか。在世中以来、綱吉は政策と個人の嗜好とが同一視されてきた。取締と処罰の厳しさで怖れられた生類憐みの令、側用人柳沢吉保の寵用、儒学尊重などは、徳川政権のどんな矛盾を打開しようとした結果だったのか。毀誉褒貶の雑説にまみれた、日本史上、最も評価の分れる将軍の生涯を描く。
目次
第1 将軍の子徳松
第2 家門大名右馬頭綱吉
第3 将軍綱吉の誕生
第4 「天和の治」
第5 教化政策から生類憐れみへ
第6 生類憐れみの政治
第7 儒仏と古典の政治
第8 その他の諸政策
第9 綱吉への批判
第10 晩年と死
第11 綱吉の評価
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keint
6
犬公方という良くないイメージが強い綱吉の伝記。 儒学への傾倒が、社会に残っていた中世的気風を取り除くための文治政治につながっているという風に感じた。 また、末期の災害多発が今までの厳しい政策に対する反発を強化したため、評判が死が望まれるようにまでになったことは初めて知った。2019/10/29
紫草
5
人間よりお犬様が大事なちょっとおかしい将軍、ではなかったのですね。別にお母さんが戌年とかそんなことではなくて、人間同士が喧嘩して切り合うのもだめだし、馬とか他の動物もみんな大事にしなければならない。という趣旨はすごくよかったと思うんだけど。人間は決まり守るべきだし犬や動物は弱い立場なんだから、というのもわかる。江戸時代の徳川将軍だから、専制君主であることになんの疑問も抱かずに自分が理想と思う社会を作ろうとしたのだろう。暗君という訳ではなかったみたいだけど、残念ながら名君でもなかったようですね。2021/01/06
あんこ
3
神経質で、常に不安につきまとわれながら生きていたのかもな〜と思うと綱吉ちゃん愛おしいわヽ(;▽;)ノ悪政と言われるけど、本人は高い理想を持ってやっていた、と思う。それがなかなか理解されず苦しんだりしたのかな。私もわりと仕事で神経質になってしまい、「きっと呆れられてる…!」と自己嫌悪に陥ることしばしばなので自分と重ねてしまった(^^;;)塚本先生の最後の一文が良い(笑)!2014/12/04
wuhujiang
2
流石人物叢書という趣でフラットに描かれている。綱吉が狂的/病気持ちといった解釈を排除し治世を公平な目で俯瞰している。特に出色なのが綱吉評価の歴史をまとめた章で、名君説・暗君説・異常性格説を並べたうえで、著者自身は「日本社会の文明化を推進した理想主義者であるが小心の専制君主」という言葉で締める。先に読んだ『犬公方』とはまた違った評価で面白い。2022/11/02
岩田貴雄
2
武断政治、文治政治への切り替わりで、綱吉自身は、殺伐とした風習等を辞めさせ、民(武士を含む)を儒教を元に教化しようと理想に燃えたが、現実がついて行けず、民には不評ばかりで、そこに天変地異が連発してボコボコにされた将軍象みたいな感。2018/02/18