内容説明
今日、これまで安定的にあったようにみえた学校と社会との繋がりが大きく揺れている。学校を卒業し職業社会に参入することを自明とする枠組みが問われているといえる。しかし、こうした両者の連絡関係は歴史的に構築されたものであり、むしろ特殊な時期の所産であったともいえる。本書が対象とした一九三〇年代はこうした学校と職業社会がシステムとして繋がりをみせた時期である。今日の教育がどこに源を持ち、どこに向かおうとしているのか、それを見据えるための基礎研究として本研究はある。本書は、一九三〇年代の教育実践や教育学の新展開を、その背後の社会変動を踏まえながら、こうした学校と職業社会との連絡関係に注目することで、明らかにしようとするものである。こうした新展開のなかに今日に繋がる教育の枠組みの特質をみようとしているのである。
目次
一九三〇年代の教育と社会をめぐる課題―人口と教育の動態史研究にむけて
1 人口問題の問題構制(「人口問題」の言説空間;教育人口動態をめぐる議論―「人口問題」における青少年と家族)
2 教育人口動態の実態(義務後教育機関をめぐる教育人口動態;都市社会の変容―大都市の人口構造と青少年への関心 ほか)
3 教育人口動態をめぐる諸学と実践(青少年労働における生活の主題化―「輔導」から「生活指導」へ;労働科学における発達論の展開―桐原葆見の労働心理学に注目して ほか)
結び ペダゴジーの新展開とその基盤
著者等紹介
木村元[キムラハジメ]
1958年生。1990年東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。一橋大学大学院社会学研究科教授
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