目次
樟の新緑が輝くとき
季節のなかに生きること
開けた窓しめた窓
白い雲の流れる日々
巷に雨の降るごとく
記憶のなかにつもる雪
雲にうそぶく槍穂高
海のなかに母がいる
旗が風になびくとき
パリで講義をした頃〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あきあかね
19
たった100頁ばかりであるのに、本書は何度読み返しても色褪せることない輝きを持っている。季節、空、雨、海、山、花々、木々、異文化や人との出逢い―これら地上の生の素晴らしさ、歓びを余すことなく伝えてくれる。それは決して観念的ではなく、著者の具体の体験に基づく想い出が走馬灯のように駆け巡る。 海から吹く風や森のなかの読書といった至福の夏の時間、松本での旧制高校時代の高原に浮かぶ白く眩しく輝く雲、雨の中にも太陽が輝くようなサイゴンの甘く明るい驟雨、人生を日々の生活の時を愛したチャールズ・ラムの随筆。⇒2021/10/16
ナオヒ
2
水村美苗との書簡集は読んだことがあったのだが、辻邦生個人名義のものを読むのは今回が初めて。しかしこれほどまでに情感溢れる素晴らしい文章を書く作家だったとは。移ろいゆく四季の美しさ、浪漫の香りが横溢する欧州の風景、蘇る青春の記憶と人生の断片。生きる喜びに溢れたこの名エッセイはこれから何度も読むことになるだろう。久しぶりに尊敬出来る偉大なる先輩、もしくは新しい人生の師を得たような気分だ。これから少しずつこの作家の本を集めていこうと思う。2019/10/22
ロバーツ
0
1994年に日経新聞に連載されたエッセイ。2024/01/12