出版社内容情報
情動の生起が身体すなわち自律神経系の活動に端を発するという仮説を述べたジェームズ、その説を一部否定しつつも生理学的な根拠に基づき新たな考えを提案したキャノン、現代の神経科学的成果に基づきソマティックマーカー仮説を提案したダマシオを取り上げ、感情と身体活動の関係の理解がどのように深化してきたかを跡付ける。
内容説明
「怖くなったから震える」のではなく「震えるから怖くなる」のだと、身体の末梢での変化が感情体験に先行すると述べたジェームズ。感情の中枢は脳内活動にあると反論したキャノン。ジェームズの枠組みに依拠しつつ、キャノンの提示した概念をも包含する理論として、神経科学的成果に基づきソマティック・マーカー仮説を提案したダマシオ。感情と身体活動の関係の理解がどのように深化してきたかを跡付ける。
目次
イントロダクション(梅田聡)
情動(ウィリアム・ジェームズ)
痛み、空腹、恐れ、怒りに伴う身体変化―情動の興奮の機能をめぐる最近の研究報告(ウォルター・B・キャノン)
ソマティック・マーカーと行動指針―理論と予備的検証(アントニオ・R・ダマシオ;ダニエル・トラネル;ハンナ・C・ダマシオ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
azu3
1
面白い構成だし、解説を読むとさらに理解しやすい。キャノンの章は斜め読み。ダマシオの既刊本も興味はあるがまだ読んでない。これから読んでみよう。2020/10/13
Yoshi
0
W.ジェームズやキャノンの原著論文の翻訳。 ジェームズは、感情の身体説の立場。キャノンはホメオスタシス研究者で、視床下部などの中枢を起源とすると考えた。 両方とも古典ではあるが、日本語で気軽に読めるので、とてもよい。2020/10/30
はぶちえ
0
心の謎から心の科学へというシリーズ名が気になって。 生理学の最新情報を網羅するのではなく、闘争逃走反応といった既知の現象がどのような実験や論証を経て確立されたのか(の片鱗)が感じ取れた。 訳者による補足もポイントを押さえており、そこを読むだけでも骨子が理解できてありがたい。2020/10/07