出版社内容情報
奴隷の剣闘士フィドルスは、盲目の王の替え玉として雇われ、氏族の運命を背負う。人は何によって生きるかを深く問う衝撃作。
内容説明
およそ2000年前のスコットランド。奴隷の剣闘士フィドルスは、不当に王位を追われ盲目にされたダルリアッド族の王マイダーの替え玉として雇われる。氏族の運命をかけた戦いのなかで、フィドルスはしだいに「王」になってゆく。中学以上。
著者等紹介
サトクリフ,ローズマリ[サトクリフ,ローズマリ][Sutcliff,Rosemary]
1920‐92。イギリスの児童文学作家・小説家。2歳の時の病気がもとで歩行困難になり、のちに車いすでの生活を余儀なくされる。14歳で美術学校に入り細密画を学ぶが、1950年ごろから小説を発表する。ローマン・ブリテン三部作『第九軍団のワシ』『銀の枝』『ともしびをかかげて』(1959年カーネギー賞受賞)で、歴史小説家としての地位を確立した(のちに四作めとなる『辺境のオオカミ』を発表)
猪熊葉子[イノクマヨウコ]
児童文学者・翻訳家。聖心女子大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たつや
54
岩波少年文庫のサトクリフ作品はこれで最後。物語のまえに、で、「昔スコットランドには、ピクト族とスコット族とが住んでたことは誰もが知っています。」ときたので、知らない私は、「え?ついていけるかな?」と焦り、困るが割りと薄い上下巻なので、すいすい読めた。奴隷戦士(闘牛の様な見世物戦闘士)だったフィドルスが、王様と入れ替わる「王子とこじき」や「影武者」のようなストーリー。そこに、歴史的背景が重なり、王を奪われた身からフィドルスがどうなるかが見もの。続きは下巻へ。2017/04/01
美紀ちゃん
46
(上)の中盤から面白くなってきた!王子マイダーの身代わり?替え玉?になった奴隷の剣闘士フィドルス。バレないの?行けるの?大丈夫なの?という感じで(下)へ!2020/08/05
miyu
38
ひとりサトクリフ祭。まずはこの「王のしるし」を選んだ。アーサー王でもローマン・ブリテンでもないが数あるサトクリフ作品の中でもとても好きな物語だ。奴隷身分の剣闘士が唯一の友といえる者と闘って相手を殺し自由の身になるが、そのとたんにこの先一体どうしたらいいのかまるで考えつかなくなるシーンが印象的だった。子供の頃はこんな場面に心惹かれなかったはずだから、やはり読む年代が違うと思うことも変わるのだろう。あれよあれよという間に王の身代わりとなるフィドルスがどこか人を惹きつける魅力のある男に感じ下巻への期待が高まる。2017/05/05
tom
19
読友さんに教えてもらった本。イギリスのジュブナイル。時代は、大昔のイギリス。ローマの軍隊と元々の勢力が入り混じっている。そして主人公は奴隷の剣闘士。運よく奴隷の身分から自由人になることができたのだけど、物心ついたときからの奴隷根性では、何をしたらよいのか分からない。困ってしまって、大酒飲んで大暴れをしてムショ入りしてしまう。ここから運命の変転が始まるという物語。下巻の帯には「人は何によって生きるのかを深く問う」と書いている。そういう物語なのか、面白くなるかなと思いながら下巻に。2022/06/28
星落秋風五丈原
17
萩尾望都漫画「偽王」を思い出した。ただし、王となる男のキャラクターはまるで正反対。「偽王」では、王としての生活を謳歌した後、今は尾羽打ち枯らした状態で主人公の前に登場する。王の果たす一つの役割において、この物語と共通点がある。佐伯かよの漫画「あきひ」の中に「山水化」という一編がある。本物よりも出来がいい贋作「岐阜出来」を収集する男が、家族の絵を書いて欲しいと依頼する物語。この男の秘密が明かされるクライマックスに、彼の妻が告げる言葉は、そのまま本作のフィドルズにかけたい言葉。2007/06/18