内容説明
母后への愛憎と皇子ブリタニキュスへの嫉妬が引き起こす、怪物ネロン(皇帝ネロ)の誕生。世界を統べる皇帝ゆえに女王ベレニスと引き裂かれるティチュス。権力とエロス、政治と情念の破滅的な絡み合いを、人間の深層と歴史の深部をえぐる詩句で描いたローマ物悲劇の頂点。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
25
皇帝の威光をふりかざして横恋慕するネロンも、世間体を気にして直前に婚約破棄するティチュスも、無様で身勝手すぎる一方で、ベレニスやジュニーら女性たちの身の退きかたが潔い。とりわけ「ブリタニキュス」終盤、息子の手にかかって殺される運命を予見しつつアグリピーヌがネロンに浴びせる鮮やかな罵倒に、皇帝はひとことも言い返せない。あなたなしには生きられない、だが統治せねばならぬというティチュスに「ならば統治なさいませ 」というベレニスの一言も痛烈。ラシーヌの描く女性の前ではすべての男は影が薄くなる。2017/09/20
吟遊
14
500ページ超えで、100ページ以上は解説、注も充実。研究書ってかんじがします。原文で読まないからわからないが、訳文はどことなく「最高」に届いていない気がした。シェイクスピアの小田島雄志訳のような「こなれた」感じがしない。とはいえ、注と解説と合わせてじっくり味わえる。2018/02/15
まめ
4
悪の鏡に幻惑されるネロン、善の鏡にしばられているティチュス。対照的な展開を比べて楽しめる。様々な目線から読み取る人物の心情も奥深い。2009/12/03
秋津
3
ベレニスとラシーヌの生涯と作品を原文と比べながら読了。2016/02/09
leppe
2
それまで善政をしいていたネロが、悪政へと向かっていく、そのちょうど転換点を記した挿話。 マザコンとブリタニキュスへの嫉妬から、ブリタニキュスを毒殺する。そして、さらなるネロの暴走を予感させて、物語は終わりを告げる。2017/06/30