内容説明
十六世紀中葉、スペイン人キリスト教徒が書き遺した類まれな世界史記述。コロンブスが記した「航海日誌」を読み解きながら、「発見」された民の人間的資質を浮彫りにし、同時に、彼らを裏切りその地を壊滅させてゆく「毒草の種」を導入した彼の責任を追及する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
26
圧縮版とはいえ、ラス・カサス 著『インディアスの破壊についての簡潔な報告』(染田 秀藤 訳 岩波文庫)に比べるまでもなく、圧倒的に詳しい。なんたって7巻本なのである。 よほど強い関心がないと、冗長に感じられるかもしれない。 けれど、コロン(コロンブス)らの言動が実に詳しい。 ラス・カサスは、褒めるべきは褒め、非難すべきは苛烈に指弾する。2018/12/09
ラウリスタ~
12
幼少期からいろんな形で何度も読んできたコロンブスのアメリカ発見に関する部分。コロンブスのキリスト教徒としての信仰心のあつさとかを熱心に説く文が多い。野心家で欲得ずくな印象をどうしても持ってしまうが、ラス・カサスの作戦なのか、そう書く事情があったのか、それとも本当にそう信じていたのか分からないが、信心深く、ある意味では偉大な人間としてのコロンの姿。確かに、どうしようもない押し付けの乗組員を操縦する執念は凄いな。いずれにしても金を求める「キリスト教徒」どもの姿。終始、金。2013/04/26
壱萬弐仟縁
4
神に対して「給うた」がかなり登場してくるので、謙譲語が相当多いことがわかる。尊敬をこれでもか、という感じで表現されている。地域を「オルべ」と表記している(81ページ)。「絶え間なく自分の身にふりかかる苦難と不運の中で、確固不動、堅忍不抜の精神」(89ページ)を保つのはなかなかできたことでない。インディオの善良さ、謙虚さ、純朴と親切さ(216ページ)。こうした資質を現代人が忘れてしまったようだ。とりわけ、謙虚さというのを取り戻るには容易なことでないところまできてしまった。文明の終着駅原発事故の対応を謙虚に。2012/12/24