内容説明
桃太郎や一寸法師の中に見られる“水辺の小サ子”の背後に潜む母性像の源流を原始大母神と子神にまで遡る。併録の「月と不死」「隠された太陽」「桑原考」「天馬の道」「穀母と穀神」はいずれも、数万年のスパンで人類の精神史を描く、壮大や試みに取り組んだ画期的考察である。口絵図版を追加して復活し、さらに、日本民俗学の第一人者である小松和彦の解説を加えて、名著がここに甦る。
目次
月と不死―沖縄研究の世界的関連性に寄せて
隠された太陽―太平洋をめぐる天岩戸神話
桑原考―養蚕をめぐる文化伝播史の一節
天馬の道―中国古代文化の系統論に寄せて
桃太郎の母―母子神信仰の比較民族学的研究序説
穀母と穀神―トウモロコシ儀礼をめぐるメキシコの母子神
著者等紹介
石田英一郎[イシダエイイチロウ]
明治36年大阪生まれ。京都帝国大学中退後ウィーン大学に留学、シュミット、コッパースに師事し民族学を学ぶ。法政大学・東京大学・東北大学・埼玉大学各教授、多摩美術大学学長を歴任。昭和43年11月9日没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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らむだ
1
月の斑点に対する世界の俗信の比較を通して、古今東西語られる月と不死のイメージを照らす『月と不死』。天岩戸神話に連なる“隠れた太陽をおびき出す”モチーフの説話を比較研究した『隠された太陽』。桑原々々という雷よけの呪語から、養蚕文化の起源や広がりを辿る『桑原考』。中国古代の家畜化された馬に関する論考『天馬の道』。母子神と小サ子と水界の関係性を 指摘し、原初の大地母神に思いを巡らす『桃太郎の母』。メキシコのトウモロコシ儀礼から豊穣の儀礼の根本観念に迫り、上記の各論とも絡み合いながら発展する『穀母と穀神』 。2022/04/12