内容説明
研ぎ澄まされた理知ゆえに、青春の途上でめぐりあった藤木忍との純粋な愛に破れ、藤木の妹千枝子との恋にも挫折した汐見茂思。彼は、そのはかなく崩れ易い青春の墓標を、二冊のノートに記したまま、純白の雪が地上をおおった冬の日に、自殺行為にも似た手術を受けて、帰らぬ人となった。まだ熟れきらぬ孤独な魂の愛と死を、透明な時間の中に昇華させた、青春の鎮魂歌である。
著者等紹介
福永武彦[フクナガタケヒコ]
1918‐1979。福岡県に生れる。一高在学中から詩を創作する。東大仏文科卒。戦後、詩集『ある青春』、短編集『塔』、評論『ボオドレエルの世界』、10年の歳月を費やして完成した大作『風土』などを発表し注目された。以後、学習院大学で教鞭をとる傍ら、抒情性豊かな詩的世界の中に鋭い文学的主題を見据えた作品を発表した。1961(昭和36)年『ゴーギャンの世界』で毎日出版文化賞、’72年『死の島』で日本文学大賞を受賞。評論、随筆も世評高い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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