出版社内容情報
鈴木隆美[スズキ タカミ]
著・文・その他
内容説明
日本人、恋愛もガラパゴス化していた?!西欧の恋愛制度が確立していく歴史を追うとともに、それが日本に輸入され、いかに変質したのかを、気鋭のプルースト研究者が軽妙な筆致で綴る。
目次
第1章 古代ギリシャの恋愛
第2章 古代ローマの恋愛
第3章 キリスト教と恋愛
第4章 中世宮廷恋愛
第5章 ロマンティックラブとは?
第6章 明治期から大正期にかけて―日本における「恋愛」の輸入
第7章 西欧における恋愛肯定論と否定論、精神分析のヴィジョン
第8章 現代日本の恋愛
著者等紹介
鈴木隆美[スズキタカミ]
福岡大学人文学部フランス語学科准教授。1976年生まれ。開成高校、東京大学理科1類を経て、同大学文学部卒。同大学大学院人文科学研究科博士課程修了。ストラスブール大学にて文学博士修得(2010年)。専門はプルーストを中心とする19、20世紀フランス文学、特に19世紀末フランスイデアリズム舞踏論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふみあき
31
最後のほうに西野カナのヒット曲『トリセツ』の話が出てきて、著者は「こんな恋愛ソングは外国では冗談でしか受け入れられない」と論評してる。私は紅白歌合戦で同曲を初めて聴いた時、著者と似たような感想を抱いた。当今(と言っても6年前だが)、こんな保守的なジェンダー観の歌が、若い女性から結構年長の世代まで支持されている(実際、私の妻も、妻の友人も同曲が大好きである)ことに、内心ひっくり返った。私はフェミニズムに懐疑的な人間だが、ここまで女性たちにその主張が届いてないことに、いっそ日本のフェミニストを哀れに思った。2022/08/21
さきん
30
恋愛というあいまいなテーマを扱う。古代ギリシャの同性愛、中世の騎士道、近代のロマン主義から現代の日本の恋愛文化についてまで。恋する相手の向こう父母が無意識に投影されているという分析はなるほどと思った。2019/03/28
yutaro13
28
西欧の恋愛制度が日本にどのように取り入れられてきたのか。それが本書の主題だが、ページの大半は西欧の恋愛制度の発展史に割かれる。古代ギリシャの少年愛とイデア論、古代ローマの男性中心主義、キリスト教における神への愛と女性蔑視、中世宮廷における精神的恋愛、個人主義を前提としたロマンティックラブ。そうした背景を無視して西欧の恋愛観を強引に導入してきたのが近代日本だが、結局のところイデア論も個人主義もない日本に根付いたとは言えず、奇妙な形で並存しているのが現状。日本の恋愛制度はどうあるべきかについても考察がほしい。2019/05/29
e
19
古代ギリシャからの西洋の恋愛の歴史と明治からの日本の恋愛の歴史について書かれていました。読みやすい文体でこの分野に知識のない私でもスラスラ読めました。中世宮廷恋愛とロマン主義恋愛がもうTheヨーロッパで好きだなあ。フロイトの精神分析については納得出来る気がしました。2019/03/02
ハルバル
12
恋愛をテーマに西欧と日本の比較文化論を語る。恋愛とは個人が主体的にするもの、というのは近代の革命とロマン主義がもたらした比較的「新しい」価値観であり、それには自立した個人、自我が問題となるのだが、明治維新とともに「恋愛」を輸入したうえに西欧的な自我だの自立した個人だの自体が「幻想」であり、日本に根付かなかった以上、西欧でいうロマンティックラブはありえない。互いの甘えと依存からなあなあの関係にならざるを得ないという見も蓋もない結論。恋愛観すら個人の自由にはなれないのかと思うとなかなか手厳しい。2020/08/07