内容説明
近代アメリカ文学を代表する3人の作家―セジウィックらによりすでにホモセクシュアルな欲望を論じられたヘンリー・ジェイムズ、レズビアン作家として知られるウィラ・キャザー、男性的異性愛のイコンとされてきたヘミングウェイをとりあげ、テクストが確かに喚起する性的な欲望と向かいあいながらも、フーコー、バトラーらをふまえ、その欲望が生成される過程や構造を分析する。ゲイかレズビアンか、異性愛か同性愛かという二分化されたセクシュアル・アイデンティティのあり方に異議を申し立てる。
目次
クィア物語論
第1部 クローゼットの扉の前で―ヘンリー・ジェイムズのホモフォビックな語り(クローゼットの獣なんかこわくない?―サスペンス仕立ての「密林の獣」;ライバルの死をめぐって―『ロデリック・ハドソン』における予示;どのストーリーにレズビアンがいますか?―『ボストンの人びと』のプロット分析)
第2部 開かれたクローゼットの内側―ウィラ・キャザーの不安なオーサーシップ(ウィリアム・キャザー・Jr.の不安―ジェンダー、欲望、オーサーシップ;父の誘惑―「ポールの場合」のエディプス読解;だれが不倶戴天の敵なのか?―信頼できない語り手ネリー・バーズアイ)
第3部 見え隠れするクローゼット―アーネスト・ヘミングウェイをクィアする(インする批評/アウトする批評―ヘミングウェイ批評のクローゼット;「正しいセクシュアリティ」は語らない―「エリオット夫妻」における行為の内容;ホモセクシュアルな身体の表象―視点と海の変容;エデンの園はどこにある?―原稿、編集、そしてアフリカ)
原稿は語り終わらない
著者等紹介
松下千雅子[マツシタチカコ]
1965年大阪生まれ。1990年同志社大学大学院文学研究科博士前期課程修了。1992年ミシガン州立大学大学院英文学専攻修士課程修了。現在、名古屋大学大学院国際言語文化研究科准教授。専門はアメリカ文学、ジェンダー批評、批評理論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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