感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
48
ユングコレクション5:『結合の神秘Ⅰ』は、ユング晩年の最重要な作品とされている。錬金術を知ることは神経症と精神病の心的諸事象を理解するのに非常に役立ち、錬金術象徴の研究は神話の研究と同様、人間の生の営みと深く関わっていると云う。本書では、付録として冒頭に錬金術の基本概念が述べられた後に結合の諸要素、次に太陽、硫黄、月、等々の献金術の象徴、さらには錬金術に見られる心の諸対立の分離と結合について論考されている。難解さを伴うものの、非常に興味深く読むことができた。2021/02/06
roughfractus02
8
心(意識と無意識の統合)が辿る個性化過程は錬金術の作業行程に類似すると著者は考える。錬金術師は瞑想し、無意識に降りて作業する。まず対自的投影である影と出会う(否定/黒化)。次に影から離れる浄化が始まるが、それは影との対立を作る心の状態でもある(分裂/白化)。が、錬金術師はさらに両者を結合させ、両者の調和と一致を試みる(赤化)。「哲学の石」や「生命の霊薬」と呼ぶものは、この一致を指すと著者は言う。「丸い四角」等彼らが用いるパラドクスは、錬金術が扱う薬でも毒でもある自然自身の対立物の一致の本性を表すとされる。2021/06/09
瀧本往人
1
本書の主題は、「結合の神秘」であるが、それは、単に「物質」の結合について関心を寄せているのではなく、錬金術における「結合」への関心を、古代神話などの元型に由来していると想定しつつ、その「結合」への欲求が、もっと言えば、「分離」と「結合」のプロセスによって生じる「エネルギー」への欲求が、私たちに一体何をもたらすのか、という、きわめて今日的な問いと関連している。http://ameblo.jp/ohjing/entry-11485890445.html2013/03/08