出版社内容情報
格差問題を生む主たる原因は学歴にある。そして今、日本社会は大卒か非大卒かに分断されている。そのメカニズムを解明し、問題点を指摘し、今後を展望する。
内容説明
日本の大卒層と非大卒層―。全人口におけるその割合は、ほぼ同数となってきた。しかもそれは今後も続く。これが本書の言う、学歴分断社会である。そして大卒/非大卒という分断線こそが、さまざまな格差を生む。学歴分断社会は、どのようにして生じたのか。そこに解決すべき問題はないのか。最新かつ最大規模の社会調査データを活用し、気鋭の社会学者がこれまでタブー視されてきたこの領域に鋭く切り込む。
目次
第1章 変貌する「学歴社会日本」
第2章 格差社会と階級・階層
第3章 階級・階層の「不都合な真実」
第4章 見過ごされてきた伏流水脈
第5章 学歴分断社会の姿
第6章 格差社会論の「一括変換」
第7章 逃れられない学歴格差社会
著者等紹介
吉川徹[キッカワトオル]
1966年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。計量社会学を専攻。現在、大阪大学大学院人間科学研究科准教授。同大学行動経済学研究センター准教授(併任)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ミカママ
468
普段うすうす感じていることを、わざわざ難しい言葉に置き換えて説明してくれている作品。目ウロコだったのが、子どもの進学に影響するのは母親の学歴(大卒・非大卒にて分断)だということ。地方に住むお年寄りの談話が興味深い。「うちの子たちは高校を卒業後、近所で家庭を構え頻繁に顔を出してくれる。東京の大学に行った(近所の)子たちは行ったきり帰ってこないで、彼らの親は寂しく暮らしてる」わたしも常々感じていることだ。2009年の作品なので、今日ではまた諸事情も変わっていることだろう。2022/03/05
ゆいまある
58
格差は学力の差である。大卒以上が高収入になりやすく、高卒以下は低収入になりやすい。もっと言うと中卒は貧困層になりやすいというなんというか当たり前のことが書いてある本だった。それぞれのグループの各論はあまり語られず、格差とは何かという総論が長くてちと退屈。ただどちらが幸福とは言えず(ここは同感)、格差は緩やかに狭まるとの予想は希望が持てる。公明党を支持する層に、低学歴低収入が多いというのが興味深い。政治の仕組みがよく分からない人達に具体的な行動を指示して取り込んだとか。へえ。2020/02/16
佐島楓
47
大学新卒者のみが最強の就職要員のような考え方はもういいかげんやめたほうがいいと思う。もちろん、それが日本社会の主流であることも、年功序列が完全に消えていないことも否定しないが、ここから考えていかないとこの問題は解決しないのではないだろうか。2015/10/03
ゆう。
32
2009年初版。格差社会の主要因を学歴差にあるとして社会学的に分析した内容です。学歴社会に対して良いことなのか悪いことなのかといった評価は著者はあえてしないといっています。学歴差がなぜ格差を生むのか、この本では僕はわかりませんでした。資本によって必要とされる労働力供給と学歴との関係を分析することなしに、学歴が生む弊害を論理的に分析することは難しいでしょう。今日的には貧困の連鎖の問題があり、学歴の問題は真剣に考えなければなりません。学歴社会の批判的検討はどうしても必要だと思いました。2018/08/07
禿童子
30
格差問題の「主成分」は学歴。日本社会は高卒者と大卒者の学歴分断線で二極分化し、親の学歴が子どもに再生産される。統計分析を駆使した結論として説得力があります。ただ、学歴によって人の一生の幸不幸が決定されるという論調には単純に疑問がわきます。希望者が全員どこかの大学に入れる。ならば高卒で不利な人生を歩まずに大学に進めばよいと勧めていますが、何か話が違うんじゃないかしら。公認の差別としての学歴を肯定して成り立っている社会がおかしいとは著者は考えないんですね。本書は2009年刊。今年出た著者の本の内容が気がかり。2018/07/22